べにーのDoc Hack

読んだら博めたり(読博)何かに毒を吐いたり(毒吐)する独白

百家争鳴

『【産経抄】「慰安婦像撤去」こそ来年の10大ニュースに』

(産経ニュース 2015/12/30)

 

以下一部引用。

 

 

「▼今回一転して、対日関係の改善を急いだ理由は何だろう。両国関係の冷え込みは、韓国経済に悪影響を及ぼす要因にまでなり、財界を中心に憂慮の声が上がっていた。反日親中に傾斜しすぎている、との米国の疑念を晴らす必要もあったようだ。

▼小欄はさらに、「北朝鮮」をキーワードに挙げたい。韓国のある新聞が発表した国内の10大ニュースで、3位にランクされたのが、「歴史教科書の国定化」だった。韓国の中学、高校の歴史教科書は、左派系学者の強い影響を受け、北朝鮮を美化する記述まで目立つ。

▼目に余る偏向教育を正すために、朴大統領が検定制度の廃止に踏み切ったのだが、世論は真っ二つに割れている。慰安婦問題が解決しなければ、親北勢力の政治工作が、ますます進みかねない。

▼元慰安婦の支援団体「韓国挺身(ていしん)隊問題対策協議会」は、今回の合意に反発している。かねて北朝鮮との密接な関係が指摘され、激しい反日活動を続けてきた。日本大使館前の路上に2011年、「慰安婦像」を違法に設置したのもこの団体である。日本側の撤去要請に応じる気配は、まったくない。」

 

 

右界隈でも左界隈でも、この話で大盛り上がりです。

 

いまではネットでおおよその資料が検索できてしまうので、

 

○こちら===>>>

http://www.ioc.u-tokyo.ac.jp/~worldjpn/documents/texts/JPKR/19650622.T9J.html

 

↑とりあえずこちらにて、「日韓請求権並びに経済協力協定」を確認することができます。

いわゆる「日韓基本条約」で明確にされていない双方の請求権に関しての協定です。

日韓基本条約」は国交正常化、日韓併合無効を確認したもの、と考えるといいのかな、と思います。(「日韓基本条約」の第二条にある「already null and void」という表現を巡っていろいろあるようです。「null and void」で「無効」という意味ですが、この「無効」がどの時点で効力を発揮するのか、についての解釈が真っ二つなようです。この場合、日韓併合に際しては条約が結ばれているのですが、それを「(併合の)条約が結ばれた時点に遡及して無効」とするのか、「(日韓基本)条約が結ばれた時点において無効」とするのか、で「日韓基本条約」の意味が異なってくるからです。「併合自体が無効」であれば、大日本帝国は半島を不法に占拠していたという意味になりますので、そこに賠償問題が発生し得ます。一方で、「併合は、日韓基本条約締結の時点で無効となった」であれば、併合期間は合法で、現韓国は大日本帝国から独立をした、というだけの話になります。)

 

その第二条に、

 

「第二条

1 両締約国は、両締約国及びその国民(法人を含む。)の財産、権利及び利益並びに両締約国及びその国民の間の請求権に関する問題が、千九百五十一年九月八日にサン・フランシスコ市で署名された日本国との平和条約第四条(a)に規定されたものを含めて、完全かつ最終的に解決されたこととなることを確認する。

2 この条の規定は、次のもの(この協定の署名の日までにそれぞれの締約国が執つた特別の措置の対象となつたものを除く。)に影響を及ぼすものではない。

(a)一方の締約国の国民で千九百四十七年八月十五日からこの協定の署名の日までの間に他方の締約国に居住したことがあるものの財産、権利及び利益

(b)一方の締約国及びその国民の財産、権利及び利益であつて千九百四十五年八月十五日以後における通常の接触の過程において取得され又は他方の締約国の管轄の下にはいつたもの

3 2の規定に従うことを条件として、一方の締約国及びその国民の財産、権利及び利益であつてこの協定の署名の日に他方の締約国の管轄の下にあるものに対する措置並びに一方の締約国及びその国民の他方の締約国及びその国民に対するすべての請求権であつて同日以前に生じた事由に基づくものに関しては、いかなる主張もすることができないものとする。

 

 

「1 両締約国は、両締約国及びその国民(法人を含む。)の財産、権利及び利益並びに両締約国及びその国民の間の請求権に関する問題が、千九百五十一年九月八日にサン・フランシスコ市で署名された日本国との平和条約第四条(a)に規定されたものを含めて、完全かつ最終的に解決されたこととなることを確認する。」

 

1951年9月8日といえばいわゆる「サンフランシスコ平和条約」のことで、その第4条はといえば、

 

 

「第四条

(a) この条の(b)の規定を留保して、日本国及びその国民の財産で第二条に掲げる地域にあるもの並びに日本国及びその国民の請求権(債権を含む。)で現にこれらの地域の施政を行つている当局及びそこの住民(法人を含む。)に対するものの処理並びに日本国におけるこれらの当局及び住民の財産並びに日本国及びその国民に対するこれらの当局及び住民の請求権(債権を含む。)の処理は、日本国とこれらの当局との間の特別取極の主題とする。第二条に掲げる地域にある連合国又はその国民の財産は、まだ返還されていない限り、施政を行つている当局が現状で返還しなければならない。(国民という語は、この条約で用いるときはいつでも、法人を含む。)」

http://www.ioc.u-tokyo.ac.jp/~worldjpn/documents/texts/docs/19510908.T1J.html より引用)

 

です。

要約すると、「「大日本帝国」の領土内にあるものに対する請求権はないよ」ということで、「日韓請求権並びに経済協力協定」は、このことも含めて「完全かつ最終的に解決されたこととなる」と言っています。

これで、対韓国との戦後処理問題は終了しており(あ、領土問題やらは別です)、3 2の規定に従うことを条件として、一方の締約国及びその国民の財産、権利及び利益であつてこの協定の署名の日に他方の締約国の管轄の下にあるものに対する措置並びに一方の締約国及びその国民の他方の締約国及びその国民に対するすべての請求権であつて同日以前に生じた事由に基づくものに関しては、いかなる主張もすることができないものとする。」ということなんですね。

ところが、どこかの誰かが「従軍慰安婦の強制連行問題」というものを言いだしまして(吉田清司という人ですが)。

それに乗っかったマスコミやら何やらがいて。

「賠償しろ」「謝罪しろ」「保障しろ」と元慰安婦の方々が騒ぎ出して(「韓国挺身隊問題対策協議会」という団体がバックでいろいろ動いているようです)。

現在までこじれている、と(去年の朝日新聞騒ぎを思い出していただければ)。

この間の流れはこれまたネットで検索していただければ簡単にわかります(が、右左ともに偏った内容が紹介されている可能性もありますので、ご注意を)。

 

個人的には、ですが、「慰安所」なるものが戦地にあるのは、兵士の性を管理する意味では論理的帰結ではないかと思います。

なければ、現地の女性を強姦することになります(あっても、そういうことに及ぶ兵士はいるのですが)。

 

それを、現代的な倫理観に照らし合わせれば「許しがたい」となるのは当然です。

ただ、戦争なんてものは後から考えれば全部「許しがたい」わけで。

子孫としては、当時において、全ての国民が必死に生きようとしていた、ということに対して感謝することしかできません(一部軍部の無能とかは除きたいですが、踊らされる方にも責任はあるわけで、そうすると誰を批難できるのか……)。

結果、今私は生きていますから。

それはそれとして、各々の感情的な問題や市民団体の活動云々はともかく、「完全かつ最終的に解決されたこととなる」のですから、政府間で問題として取り上げる必要はないでしょう。

 

 

それをやってきたのがお隣の国でして。

 

 

今回の外相会談における「慰安婦問題」の同意の内容は、

 

○こちら===>>>

www.asahi.com

 

朝日新聞デジタルから引用しますと、

 

<日本側>

(1)慰安婦問題は、当時の軍の関与の下に、多数の女性の名誉と尊厳を深く傷つけた問題であり、かかる観点から、日本政府は責任を痛感している。

安倍首相は、日本国の首相として改めて、慰安婦としてあまたの苦痛を経験され、心身にわたり癒やしがたい傷を負われた全ての方々に対し、心からおわびと反省の気持ちを表明する。

(2)日本政府は、これまでも本問題に真摯に取り組んできたところ、その経験に立って、今般、日本政府の予算により、全ての元慰安婦の方々の心の傷を癒やす措置を講じる。具体的には、韓国政府が、元慰安婦の方々の支援を目的とした財団を設立し、これに日本政府の予算で資金を一括で拠出し、日韓両政府が協力し、全ての元慰安婦の方々の名誉と尊厳の回復、心の傷の癒やしのための事業を行うこととする。

(3)日本政府は上記を表明するとともに、これらの措置を着実に実施するとの前提で、今回の発表により、この問題が最終的かつ不可逆的に解決されることを確認する。

あわせて、日本政府は、韓国政府と共に、今後、国連等国際社会において、本問題について互いに非難・批判することは控える。

なお②の予算措置については、規模はおおむね10億円程度となった。以上については日韓両首脳の指示に基づいて行ってきた協議の結果であり、これをもって日韓関係が新時代に入ることを確信している。

<韓国側>

(1)韓国政府は、日本政府の表明と今回の発表に至るまでの取り組みを評価し、日本政府が表明した措置が着実に実施されるとの前提で、今回の発表により、日本政府と共に、この問題が最終的かつ不可逆的に解決されることを確認する。韓国政府は、日本政府の実施する措置に協力する。

(2)韓国政府は、日本政府が在韓国日本大使館前の少女像に対し、公館の安寧・威厳の維持の観点から懸念していることを認知し、韓国政府としても、可能な対応方向について関連団体と話し合いを行い、適切なかたちで解決するよう努力する。

(3)韓国政府は、今般日本政府が表明した措置が着実に実施されるとの前提で、日本政府と共に、今後、国連等国際社会において、本問題について互いに批判することは控える。

国交正常化50年の今年中に岸田外相とこれまでの交渉に終止符を打ち、この場で交渉妥結を宣言できることをうれしく思う。今回の合意のフォローアップ措置が着実な形で履行され、辛酸をなめさせられた元慰安婦の方々の名誉と尊厳が回復され、心の傷がいやされることを心より祈念する。

また両国の最もつらく厳しい懸案であった元慰安婦被害者問題の交渉が妥結したことを機に、来年からは新しい気持ちで、新しい日韓関係を切り開いていけることを期待する。

 

という内容です。

首相が謝罪する必要はどこにもなかったと思いますが、魑魅魍魎の跋扈する世界ですので、何かしら犠牲にする必要はあったのでしょうかね。

それはともかく、

 

「(2)日本政府は、これまでも本問題に真摯に取り組んできたところ、その経験に立って、今般、日本政府の予算により、全ての元慰安婦の方々の心の傷を癒やす措置を講じる。具体的には、韓国政府が、元慰安婦の方々の支援を目的とした財団を設立し、これに日本政府の予算で資金を一括で拠出し、日韓両政府が協力し、全ての元慰安婦の方々の名誉と尊厳の回復、心の傷の癒やしのための事業を行うこととする。」

 

「全ての元慰安婦の方々」……この部分がどう捉えられるのか、がはっきりしません。

第二次大戦に限定しているのか、大日本帝国領内に限定しているのか。

もし、このままの表現なら、少なくとも第二次大戦中の大日本帝国領内における元慰安婦のみなさんに対しても、なんらかの方策を講じなければならないのですが……「韓国政府が、元慰安婦の方々の支援を目的とした財団を設立し」……なんですよね。

財団を設立するのは韓国政府で、やるのはその財団。

実際に、すでに台湾、中国、インドネシアなどが声を上げているようですが、↑の通りに言うしかないですよね日本としては。

今回の発表により、この問題が最終的かつ不可逆的に解決されることを確認する。」ですから、「元慰安婦に関する問題はこれで終わり(国を問わず)」と解釈することも可能で、日本はそう主張するでしょう。

他方韓国側は、

「(2)韓国政府は、日本政府が在韓国日本大使館前の少女像に対し、公館の安寧・威厳の維持の観点から懸念していることを認知し、韓国政府としても、可能な対応方向について関連団体と話し合いを行い、適切なかたちで解決するよう努力する。」ということで、今までもウィーン条約に違反していると日本側が主張してきた問題に対して、対応せざるをえなくなっています(ただ、努力義務ですので、少女像をどかすかどうかは問われていません)。

 

○こちら===>>>

https://www1.doshisha.ac.jp/~karai/intlaw/docs/diplomat.htm

 

↑「外交関係に関するウィーン条約」というのがありまして、その中で、

 

「第二十二条 1 使節団の公館は、不可侵とする。接受国の官吏は、使節団の長が同意した場合を除くほか、公館に立ち入ることができない。

2 接受国は、侵入又は損壊に対し使節団の公館を保護するため及び公館の安寧の妨害又は公館の威厳の侵害を防止するため適当なすべての措置を執る特別の責務を有する。
3 使節団の公館、公館内にある用具類その他の財産及び使節団の輸送手段は、捜索、徴発、差押え又は強制執行を免除される。
第二十三条 1 派遣国及び使節団の長は、使節団の公館(所有しているものであると賃借しているものであるとを問わない。)について、国又は地方公共団体のすべての賦課金及び租税を免除される。ただし、これらの賦課金又は租税であつて、提供された特定の役務に対する給付としての性質を有するものは、この限りでない。」

 

と書かれています。

大使館前に少女像が設置されても、韓国側は「それは民間がおいたので、政府がどうこうできるものではない」と言い逃れをしてきたのですが、これで何も対応しない、という姿勢は保てなくなりました(努力したけどだめだった、は別にオッケーなんですけどね)。

 

年末のドタバタになったのは、韓国の経済がやばいからだとか、アメリカの圧力(対中国問題を考えると、韓国をあちら側(共産圏/レッドチーム)にこれ以上近づけるのは得策ではない)とか、いろいろありますが。

ただまぁ、なんら文書を交わしていないのがどうなのかとは思います(共同記者会見しちゃってますから、さすがに反故にはできないでしょうが、日本人の常識では計り知れないですから、あの国)。

 

ああ、そういえば、以前「アジア女性基金」というものがありまして、

 

○こちら===>>>

外務省: アジア女性基金による事業の概要

 

↑その印象はともかく、戦後復興した日本が様々な形で各国に協力してきたのは確かです(金を出しただけ、という批判はありますが)。

 

○こちら===>>>

http://www.mofa.go.jp/mofaj/annai/yosan_kessan/kanshi_kouritsuka/gyosei_review/h25/h24jigyo/pdfs/002.pdf

 

↑「アジア女性基金」はフォローアップ事業というのが今でも(これは25年度の資料ですが)行われています。

他方、日本人の元慰安婦の方々に対しては、何かあるのか(日本人ですので、名乗り出られない方々が多くいらっしゃるのではないかと想像はしますが、大部分の慰安婦の方々は日本人だったはずで……何と申し上げてよいのやら、自分が新兵であればおそらく感謝の念しかなかったことでしょう)。

 

 

どれもこれも、戦争に負けたのがいけないのです。

70年前の話を今も持ち出すというのは、それだけ被害が大きかったともいえますが(日本の被害も甚大ですよ)、一方で「やるからには勝つ、最悪引き分けには持ち込む」ということを日本人に植えつけようとしているとしか思えないんですよね。

それで、占領しておいて、軍隊を持たせず、都合が悪いからと警察予備隊を作って、経済復興すれば「アメリカに守られているからだ」、都合が悪ければ「元枢軸国だから本性は悪なんだ」とか、知らんよそんなこと。

9条信者の方には申し訳ないですが、おそらく憲法改正して軍隊を持つようになりますよ、日本。

 

 

(元記事)

www.sankei.com