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べにーのDoc Hack

読んだら博めたり(読博)何かに毒を吐いたり(毒吐)する独白

『暦で読み解く古代天皇の謎』大平裕

 

暦で読み解く古代天皇の謎 (PHP文庫)

暦で読み解く古代天皇の謎 (PHP文庫)

 

 私は妄想したいだけの人間なので、こうして学問として記紀を扱われる方には、ただそれだけで敬意を表してしまいます。

例えば、『日本書紀』は漢文で書かれているのですが、その音韻(呉音か漢音か)の分布で筆記者をあぶりだそうとしたり、本書のように用いられている暦から何かを浮かび上がらせようとしたり。

もう頭がさがるばかりです。

本書を簡単の内容を簡単に書くとしたら、『日本書紀』の作成者が、暦を使って歴代天皇の即位年月をどのように操作したのか、ということです。

なぜそのようなことが必要だったのかといえば、一つには、大陸の歴史書に「倭」の女王(卑弥呼)のことが、当時の暦で持って年代まで正確に書かれていたからです。

日本書紀』は、国外を意識して書かれた歴史書ですから(だから漢文)、そこに齟齬があっては歴史書としての価値が下がります。

歴代王朝の中から探し出された人物が「神功皇后」で、その事跡は(当然ながら)伝承されていたでしょうが、それを無理やり「卑弥呼」に比定してしまったところに、当時の朝廷の危うさのようなものが感じられます。

こうした見方からすれば、「卑弥呼」の「倭」という国の伝承は、『日本書紀』編纂時にはすでに伝承としてすら残っていなかったか、あるいは「倭」と大和朝廷が別の国だったか、と推測されます(あるいは、大陸に伝わったのとは全く別の伝承として残っていて、そのために何が「卑弥呼」の伝承なのかもはや探り出せなくなっていたか)。

また本書では、いわゆる「倭の五王」について多くのページがさかれており、そちらに興味があるかたにもオススメです。

暦を読みほぐしながら、文献的、考古学的アプローチも用いて、『日本書紀』の何が操作されたのか、ということが明らかにされていくのは、知的スリリング満点です(なので、基本的な古代史の知識がないと、ちょっとついていくのがしんどいかもしれません)。

もちろん、全面的に信頼することは難しいのでしょうが(『日本書紀』の暦の扱い方を信頼しなければいけませんから……とはいえ、当時の暦というのは、正確な知識なしに操作できるものでもないので、必要以上に疑うこともないでしょうか)、、史学界はもう少し関心を向けてもいいのではないでしょうか。

作者は、他にも本を出されているようなので、そちらも手に取ってみたいなと思います。