昨年末くらいから、「一人ロリンズ祭り」を再開しております。
<シグマフォース>シリーズ、『マギの聖骨』、『ナチの亡霊』、『ユダの覚醒』と読了していて、その頃「一人ロリンズ祭り」真っ最中だったのですが、しばらく遠ざかっていました。
で、久々に骨太な冒険ものが読みたくなったので手に取ったら、やっぱり面白かったので、こりゃ一気にいくしかないな、と。
<シグマフォース>は、アメリカの国防総省の防衛高等研究企画庁(DARPA)に所属する機密組織で、隊員がそれぞれ何らかの科学分野等で博士号を取得するほどの知識を有しています。
帯には「彼らは、殺す訓練を受けた科学者。ジェームズ・ボンドより切れ者で、危険度は2倍」とあります。
うん、ちょっと煽りすぎ。
『マギの聖骨』では東方の三博士の残した聖遺物を、『ナチの亡霊』では「最後の軍隊」が残した遺産を、『ユダの覚醒』ではマルコ・ポーロの伝説に挑んできた<シグマフォース>。
今回の相手は「デルポイの神託」。
そう、「生協の○○さん」のごとく、的確な神託を与えた古代ギリシャ、アポロンにまつわる伝説です。
<シグマ>の隊員グレイソン・ピアースは、ワシントンのナショナルモールで奇妙なホームレスの男性と出会う。
その男性は、お金を恵んでもらうどころか、彼にお金を渡したのだった。
グレイにコインを渡した男性は、直後狙撃された。
コインに記されているのは「デルポイの神殿」。
<シグマ>の司令官ペインター・クロウと合流したグレイは、死亡したホームレスの男性がMITの神経学の博士ポークだと知る。
しかも彼は、被爆していた。
彼がこのコインをなぜグレイに託したのか、その足跡を追っていくと、スミソニアン自然史博物館にたどり着いた。
開催されていたのは、「ギリシア神話の失われた謎」。
そして、その中心人物は、殺害されたポークの娘エリザベスだった。
一方のペインターは、<シグマ>の研究者から、ポーク博士がどこで被爆したのか、その可能性を告げられて驚く。
それは、チェルノブイリだった。
ワシントンからはるか彼方のチェルノブイリで、博士は何をしていたのか。
そしてそれは、「デルポイの神託」とどんな関係があるのか。
……と、ここからはいつもの怒涛の展開で、世界中を飛び回るグレイ一行に襲いかかる災難もまた怒涛のようです。
よく死なないな、グレイ。
<シグマ・フォース>シリーズを読んでいると、スレイドの<カナダ騎馬警察>シリーズを思い出します。
あのシリーズのおかげで私は、カナダは「超人的な殺人鬼が跳梁跋扈する恐怖の国」と思っているんですが。
<シグマ・フォース>を読むとまだ甘かった、「世界中に超人的な犯罪集団が跳梁跋扈しているのだ」と思い知らされます(あ、物語の中の話です)。
『ロマの血脈』では、他にも旧ソ連の超人兵士計画超心理学、サヴァン症候群、エンパシー、トラ(?)などなど、いろいろなネタが登場します。
そしていつも通り、歴史や科学知識に関しては(現段階で得られる情報としては)真実なのだ、とロリンズ先生言い切っています。
これは、一歩間違えればトンデモ話ですけれども、最新の歴史・科学・軍事に関する知見に基づくというのは、読み手を魅了しますよね。
前作『ユダの覚醒』から今回の『ロマの血脈』は、是非ともぶっ続けて読んでいただきたいと思います。
やっぱり面白いなぁロリンズ先生……。
「そうした人々は歴史を変え、人類の進歩に貢献し、未来への道筋を示してくれた。アーチボルドが好んで引用していた言葉がある。自閉症に関する有名な著作があるドクター・テンプル・グランディンの言葉だ。『もし何らかの力で自閉症がはるか昔に地球上から姿を消していたとしたら、人間は今でも洞窟に住み、火のまわりに座って過ごしていることでしょう』私は彼女の言う通りだと思う」(上巻・p355)