べにーのDoc Hack

読んだら博めたり(読博)何かに毒を吐いたり(毒吐)する独白

『桜花忍法帖 バジリスク新章』(上)(下)山田正紀

 

 

山田つながりで、山田正紀氏が山田風太郎先生の『甲賀忍法帖』の続編をお書きになった、ということで「こりゃ大変だ」とばかりに購入。

表紙は当然せがわまさき先生。

ストーリーは、『甲賀忍法帖』の伊賀・甲賀の忍術合戦から十年後から始まります。

駿河大納言徳川忠長の元に、大御台所(江)が臨終間際との知らせが届きます。

ときに天候は風雨乱れて、駿河から江戸へ馳せ参じようとも、荒れ狂う大井川(もともと東海道防衛上の理由から橋はかかっていない)を渡る術はありません。

身を休ませる忠長を守るは、忍術を極めた甲賀五宝連。

しかし、彼らは「成尋宗」を名乗る謎の集団に殺害されてしまいます。

そして「成尋宗」は忠長を「神」の座につける、と囁いたのでした。

 

いかなる術も相手に返す甲賀弦之介の瞳術。

いかなる術も無効にする伊賀の朧の瞳術。

それらを受け継いだ二人の子供、甲賀八郎と伊賀の響。

互いに強力な瞳術を持ち、その発動により空間をも共有することができる兄妹。

それが故に、会わず、また愛さずを誓わなければならなくなった二人。

しかし、「成尋宗」は伊賀、甲賀ともに狙ってきているらしい。

生き残った若い伊賀者、甲賀者を集めて、二人は「成尋宗」に戦いを挑みます。

 

あらすじを書いてしまえばこんなところで、風太忍法帖らしい荒唐無稽、無残凄惨な戦いを、山田正紀氏のSFパワーで乗り切る、というなかなか無茶な物語でした。

何しろひとまず、非常に「風太忍法帖」しているのに驚きました(文章自体は、山田風太郎先生の方が平易でやや古めかしく、山田正紀氏はちょっとばかり冗長で理屈っぽい)。

出てくる忍法も、風太郎先生に負けず劣らず怪しい感じで、特に「成尋宗」などは『時逆鉾』(時間を操る)、『金剛楼閣』(空間を操る)、『魔獣召喚』(化け物を召喚する)、『宿命通』(?)と……ほぼ無敵状態の無理ゲーです。

そして『機神兵団』の山田正紀氏ですから、巨大ロボット(?)も出てきます。

 

私にとって山田正紀氏は『ミステリ・オペラ』の超ミステリなわけですが、人によってはやはりSF、『神狩り』や『機神兵団』だったりするんでしょうか。

特に『機神兵団』はアニメ化もされましたし、昭和初期に巨大ロボットががっつんがっつん戦い合うというのはなかなかの面白さだったと思います(読んでないんですが……いえ、読みたいなと思いつつ)。

一方の山田風太郎先生の世界観を漫画で再現できるのは、もはやせがわまさき先生しかいないのではないかと思ったりします。

特に『甲賀忍法超バジリスク』での瞳術の描写は震えましたなぁ……。

今は『魔界転生』が絶賛連載中。

それが終わったら、『桜花ー』をコミック化してくださるのでしょうか(ちょいと無茶かな……でも脳内変換できてしまっています)。

 

講談社が新たにしかけた「タイガ」という文庫シリーズ。

森博嗣氏のウォーカロンが活躍するらしいやつとか、西尾維新氏の美少年探偵団とか。

最近、森博嗣氏を読むのを封印しているので、そろそろまた再開しようかな……。

この中に山田正紀氏を突っ込んでくるあたりに講談社の恐ろしさが見え隠れする、といいますか。

最近の山田正紀氏は、シリーズを立ち上げてもなかなか終結しない、という評判ですから、よく書き終わったものだ、と素直に感謝しています。

というわけで、『甲賀忍法帖』か『甲賀忍法帖バジリスク』を読み終えてから、こちらもお楽しみください。

 

 

「見事に咲いた花ならば、心おきなく散り候えー」