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べにーのDoc Hack

読んだら博めたり(読博)何かに毒を吐いたり(毒吐)する独白

『アイス・ハント』(上下)ジェームズ・ロリンズ

 

アイス・ハント (上) (扶桑社ミステリー)

アイス・ハント (上) (扶桑社ミステリー)

 
アイス・ハント (下) (扶桑社ミステリー)

アイス・ハント (下) (扶桑社ミステリー)

 

 

終わってなかった一人ロリンズ祭り(てへ)。

<シグマフォース>シリーズとは別の単発物ですが、登場人物がちょっとだけリンクしています。

 

 

アラスカで魚類野生動物庁の監視員を務めているマット・パイクは、元グリーンベレーだったが、ソマリア紛争に参加して軍務に嫌気がさして除隊した。その後アラスカに何かを求めてやってきたが、出会ったのはイヌイットの血を引くジェニファーだった。彼らの幸せは、その結晶である長男の死までしか続かなかった。以来二人は、アラスカという限られた、しかし広大な大地で別々に暮らしている。

偶然遭遇したグリズリーの親子を、狼との交配種である愛犬ベインとともに追い払ったマットは、セスナの墜落に遭遇する。操縦していたのはマットの知人だった。パイロットは助からず、同乗していたシアトルタイムスの記者グレイグ・ティーグが救出された。クレイグはオメガ漂流基地(ドリフト・ステーション)を目指しているという。北極海の未踏海域で微細なデータを収集する、という海軍と民間の研究はすでに終了していたが、オメガだけは漂流してしまい接近困難域に入り込んでいるらしい。それを政治部の記者が追いかけてきた、ということはロシア絡みの問題でもあるのか(アラスカとロシアは海を隔てているだけの関係だ)。オメガに向かうのは困難だ、とクレイグに告げるマットは、新たな飛行機の接近に気づいた。そこから飛び降りたスカイダイバーたちはスノーチョッパーと呼ばれるバイクにまたがり、ライフルで武装していた。狙いはどうやらクレイグのようらしい。

 

海軍所属の最新鋭調査潜水艦ポーラー・センチネルは、北極海を走査していた。オメガドリフトステーションに所属している艦は、謎の氷島を発見していた。その氷島には、前大戦期のロシアIシリーズの潜水艦が突き刺さっていた。どうやらそこは、氷島内部に作られた秘密基地だったようだ。その内部には人間の死体とともに、今なお何か活動する生物が残されているらしかった。

 

ロシア海軍の提督ペトコフは、新型アクラII型潜水艦に極秘で搭乗していた。かつて彼の父が関係していた研究、謎めいた<グレンデル>(『ベオウルフ』に登場する怪物)を探すために。目的地は北極海氷島。それは、ポーラー・センチネルの遭遇したあの氷島基地にあるはずだった。

 

 

というように、<シグマ・フォース>シリーズと少し毛色が違って、超人クラスのエリートは出てきませんが(実際には、元グリーンベレーのマットをはじめ、一流のエキスパートばかりなのですが)、北極海旧ソ連の関係した氷島の秘密基地の謎を暴くために、地上(氷上?)からはマットやクレイグが、海からはペトコフとポーラー・センチネルがそれぞれ激しい戦闘を繰り広げていきます。

登場人物も魅力的で、ポーラー・センチネルの艦長ペリー、耳の不自由な地球物理学者アマンダ、マットの元妻ジェニファーとイヌイットの血を引く父親のジョン、敵対するロシア軍人ペトコフは『MGS』に出てきても超かっこよさそうなイケメンジジイ(66歳)ですし、ウルフドッグのベインもかっこいいです(最近、ウルフドッグの記事や動画をネットなどで見ましたが、いや本当にかっこいいですねぇ……猫好きでも惚れちゃいます)。

作者のロリンズは獣医でもあったので、毎回何かしら魅力的な動物が出てきますが、ベインやマットの愛馬、そして<グレンデル>……以下ネタバレになりますのでご注意を……は、<歩く鯨>といわれたアンブロケトゥスの生き残りではないか、と考えられています。

 

○こちら===>>>

アンブロケトゥス - Wikipedia

 

そして何といってもコワルスキー!!

まだ海軍所属のコワルスキーが大活躍(……かな?……)なのです!

皮肉とおふざけは<シグマフォース>シリーズに比べたらちょっと抑えめですが、ふてぶてしく船乗りらしく戦うところは相変わらずです(この後で<シグマ>に呼ばれるようなので、こっちが初登場ですが)。

こういうキャラを生み出せるのはアメリカ人だからなんですかねぇ……軍隊ものの映画とかで勉強すればいいのか……(軍事にまったくといっていいほど疎いもので)。

ストーリーとしては、今回は敵方に謎の美女、が出てきませんが、かわりにこっち側に戦う女達が登場します(ジェニファー、アマンダ、あとコワルスキーの同僚の水兵)。

かといって、ロリンズ節(私生活ではだめな中年がなんとかがんばるぜ!)は相変わらずなので(もはや鉄板ですな)、いやぁハリウッド向けですわ本当に。

イヌイットの問題、アメリカとロシアの関係、古代生物、<シグマ>シリーズでも重要な、現実にもあるガジェットを効果的に取り入れての潜水艦バトル(とはいえ、ポーラー・センチネルは調査艦なので、武器といったらその高度な調査能力だけなのです)……いやぁハリウッド向けですわ本当。

読み物として、ノンシリーズも面白いことがわかってしまったロリンズさん。

もう一つノンシリーズで『アマゾニア』というのがあるので、そっちも手を出してしまうでしょう(予言)。

 

 

マットはすっくと立ち上がった。「心配するな。アラスカじゃあな、昔からこう言うんだ」

「どう言うんだ?」

「この土地では、強い者しか生き残れない……が、強い者すら生き残れないこともある」(p111/上巻)

 

全員が息を詰めて、ペリーの決断を待っていた。ここからどこに向かうのか? 進むのか、戻るのか?

次の命令が、その疑問に答えた。「無音潜航(ウルトラ・クワイエット)」(p100/下巻)

 

なんか無意味にかっこいいですよねぇ、「無音潜航」。