べにーのDoc Hack

読んだら博めたり(読博)何かに毒を吐いたり(毒吐)する独白

『この闇と光』服部まゆみ

 

この闇と光 (角川文庫)

この闇と光 (角川文庫)

 

 

女流作家だって食わず嫌いはやめてみよう、と思っています(翻訳は、けっこう女性のものでも読んでいたりするのですが)。

というわけで、ゴシック風な表紙に誘われて購入してみました。

 

 

お城の中に住むレイアは、目がほとんど見えません。

父王はとても優しくレイアを育てていましたが、仕事のあるときにはなかなか帰ってきません。

そんなときレイアの相手をするのは、ダフネという女でした。

レイアにとっては、ダフネは魔女でした。

意地悪ばかりする、いやな香りのする女でした。

目が見えなくなる前に覚えているものを、父王は忘れないようにと教えてくれました。

指で文字をたどり、ものの形に触れ。

大きな熊のぬいぐるみ、それにオーストラリアン・シルキー・テリアのダーク。

音楽、いくつもの物語。

ダフネはいやだったけれど、レイアはとても幸せでした。

しかし、やがて暴動が起こり、お城は危険にさらされました。

嫌いなダフネに連れられて、レイアは脱出したのです。

そして、「安全なところ」にダフネに置き去りにされました。

父親が迎えに来る」と言い残されて。

そして、ダフネの言った通り、父が迎えに来たのです。

 

 

という感じの、異国の、目の不自由な姫の成長物語かぁ……と思って読んでいました。

その耽美な表現がまさに女性の手になる、といった感じで、おっさんにはなかなか厳しいものがありました……そうですね、BL好きなかたなら入り込めるのかもしれませんです。

といって、連城三紀彦氏の例もありますから、耽美にだまされてはいけません。

上に書いたあらすじは、前半部分です。

後半には怒涛の展開が待っています。

結末は……そうですね、本格好きには物足りない感じですが、ダールみたいな奇妙な味も好きなかたであれば、いろいろな余韻を残していくので、満足できるのではないでしょうか。

読み始めたときには、「あれ、これって……」と思っていたのですが、どうやら似た趣向の別の作品のことを思い浮かべていたようで(といってもそれは読んだことがなく、何かで紹介されていたのをかじっただけです)、だんだんと自分の予想とは異なる方向へ行ってしまい、「おいおい、このままじゃ……」と思っていると、フルスイングで現実に連れ戻される、というけっこう豪腕な作品です。

直木賞候補になった作品だそうです(1998年)。

うーん、書きすぎだろうか……このくらいなら大丈夫だと思いますが、ネタバレを避けるために引用はいたしません。

いい経験をしました。