女流作家だって食わず嫌いはやめてみよう、と思っています(翻訳は、けっこう女性のものでも読んでいたりするのですが)。
というわけで、ゴシック風な表紙に誘われて購入してみました。
お城の中に住むレイアは、目がほとんど見えません。
父王はとても優しくレイアを育てていましたが、仕事のあるときにはなかなか帰ってきません。
そんなときレイアの相手をするのは、ダフネという女でした。
レイアにとっては、ダフネは魔女でした。
意地悪ばかりする、いやな香りのする女でした。
目が見えなくなる前に覚えているものを、父王は忘れないようにと教えてくれました。
指で文字をたどり、ものの形に触れ。
大きな熊のぬいぐるみ、それにオーストラリアン・シルキー・テリアのダーク。
音楽、いくつもの物語。
ダフネはいやだったけれど、レイアはとても幸せでした。
しかし、やがて暴動が起こり、お城は危険にさらされました。
嫌いなダフネに連れられて、レイアは脱出したのです。
そして、「安全なところ」にダフネに置き去りにされました。
「父親が迎えに来る」と言い残されて。
そして、ダフネの言った通り、父が迎えに来たのです。
という感じの、異国の、目の不自由な姫の成長物語かぁ……と思って読んでいました。
その耽美な表現がまさに女性の手になる、といった感じで、おっさんにはなかなか厳しいものがありました……そうですね、BL好きなかたなら入り込めるのかもしれませんです。
といって、連城三紀彦氏の例もありますから、耽美にだまされてはいけません。
上に書いたあらすじは、前半部分です。
後半には怒涛の展開が待っています。
結末は……そうですね、本格好きには物足りない感じですが、ダールみたいな奇妙な味も好きなかたであれば、いろいろな余韻を残していくので、満足できるのではないでしょうか。
読み始めたときには、「あれ、これって……」と思っていたのですが、どうやら似た趣向の別の作品のことを思い浮かべていたようで(といってもそれは読んだことがなく、何かで紹介されていたのをかじっただけです)、だんだんと自分の予想とは異なる方向へ行ってしまい、「おいおい、このままじゃ……」と思っていると、フルスイングで現実に連れ戻される、というけっこう豪腕な作品です。
うーん、書きすぎだろうか……このくらいなら大丈夫だと思いますが、ネタバレを避けるために引用はいたしません。
いい経験をしました。