べにーのDoc Hack

読んだら博めたり(読博)何かに毒を吐いたり(毒吐)する独白

『鬼門の将軍』高田崇史

 

鬼門の将軍

鬼門の将軍

 

 あ、もう文庫になってた……三年前か。

高田さんファンとして、何をおいても新刊が出たら読むようにしているのですけれど、たまに情報を得られなくてスルーしていたりする……『QED』シリーズでもすでに『御霊将門』が出ていますが、あちらは……いかん、記憶がない……相馬馬追いのことしか浮かんでこないぞ……まあ、こちらは帯にもありますが平将門は大怨霊なのか?」がテーマです。

実際に起きた事件といえば、京都で首なしの死体が発見され、一方で東京の将門の首塚には、男性の生首が転がっていた……京都で斬首された「平将門」の首は、遠く関東まで飛び去った、という伝承があるので、これはある種の見立てではないのか、という推測を警察がするとは思えませんが、ごく近い時期に、首なしの胴体と生首が別々の場所で発見されれば、同一人物かと考えるのは自然なことでしょう。

高田さんの作品内で起こることは、だいたいが見立てなので、いつも通りの安心感。

で、事件の進展とともに、「平将門」に関する謎も明かされていくわけですが、その合間で「貴船神社」、丑の刻参り、「橋姫」と「滝夜叉姫」、「神田明神」、「成田山新勝寺」、江戸っ子ならば将門を調伏した成田山へはお参りしないという俗説……などなど、知っていることも知らなかったことも、掘り下げられていくので楽しいったらないですね。

成田山新勝寺」は、数年前に「鹿島神宮」「香取神宮」に行ったとき、帰りに寄ろうかと思ったのですが、超絶な雨が降ってきたので諦めた記憶があります(その前にへとへとでしたけど)。

東海地方で言えば、岐阜県の「南宮大社」は飛び去ろうとした首を落とした、ということで、その場所は「御首神社」という神社になっています。

将門公が怨霊かどうか、は本書を読んでみて考えていただくとして、我々昭和後半のオタク世代にとって、「平将門」は怨霊である、というイメージを植えつけたのは、どう考えても『帝都物語』ですよねぇ……。

 

 

帝都物語(全6巻セット)

帝都物語(全6巻セット)

 

 

ああ、今ならKindleで読めるのかな……結局全部は読めてないので……映画です映画、何回か観ましたよ、虚実入り乱れる様は、山田風太郎大先生から受け継がれた由緒正しい伝奇ものの体裁、こういうのが結局好きなんですよね私。

 

 

帝都物語

帝都物語

  • メディア: Prime Video
 

 

あんまり、「平将門」のイメージはない(というより、嶋田久作さんの加藤保憲のイメージがね……)かもしれないですが、一応、メインは「平将門」のパワーで東京壊滅、だったはず……首塚鳴動とか、ありませんでしたっけね……あとは学天即とギーガーの護法童子か……奇想っていいなあ……二宮金次郎像が要石とかね……。

首が実際に宙を飛ぶわけはないので、個人的には、将門シンパが晒された首を不憫に思って、関東に持ち帰る、その途中で様々な伝説が置いていかれたのではないか、と思っています。

朝廷としても、まさか「首を持ち逃げされてしまった」というわけにはいかないでしょうから、これは「独りでに飛び去った」ことにしよう、と。

面白くもない説ですが。

 

『QED』が終わっても……いや、実際は終わってなかったのでほっとしているのですが……様々な歴史の謎に独自解釈を加えられる高田さんの小説は、相変わらずの楽しみです(偏っている部分も楽しみましょう)。

まだまだネタは残っていそうですからなぁ……最近は自分が古代史ではなくて戦国に興味を持ってきたので、そちら方面でもいろいろとお願いしたいところ……目下、『麒麟がくる』を観始めていますよ……人が多くて困る……。