べにーのDoc Hack

読んだら博めたり(読博)何かに毒を吐いたり(毒吐)する独白

勝者ゼロ、敗者1億7千万

東京五輪エンブレム取り下げは「ネット大勝利」ではないと思う件(ふじいりょう)』

Yahoo!ニュース 2015/9/2)

 

以下一部引用。

 

 

「(略)

潮目が変わったのは、8月28日に組織委員会が原案を公表したことだろう。リエージュ劇場ロゴとの相違性を明らかにするために開かれたはずが、それまでの主張との矛盾や、2013年のヤン・チヒョルト展のポスターと似ているという新たな疑惑が浮上し、カンプに使われている写真が個人ブログからの盗用で、しかも著作権表記を作為的に外していることがネットで次々に「検証」されていった。この頃から佐野氏を擁護していた識者たちの中からも意見を変える人が現れはじめ、個人的には大手メディアも批判の色を強めていったように思える。

そして9月1日にエンブレムの使用を中止する方針が決まった。これについて「ネット大勝利」とする向きがあるし、そのように報じられている。

 

(略)

 

エンブレム案について「模倣や盗作は断じてない」と疑惑を否定し続けている。さらに、「残念ながら一部のメディアで悪しきイメージが増幅された」と言及、自宅にまで自身への誹謗中傷が送られ迷惑行為、家族や親族へのプライバシー侵害があったといい、「もうこれ以上は、人間として耐えられない限界状況だ」「家族やスタッフを守る為にも、もうこれ以上今の状況を続けることは難しいと判断し」取り下げる決断をした、としている。

つまり、ネットを中心とした「根も葉もない誹謗中傷があった」ために、「本来ならば取り下げる必要のないデザイン」を取り下げる決断をした、と読めるのだ。

 

(略)

 

永井一正審査委員長による「オリジナルだと認識でき、専門家の間では分かり合えるが、一般国民には分かりにくい」という答えを得て、組織委員会としては「専門家ではないから判断する立場にはない」とした上で永井氏の意見に追従し、「デザインは模倣ではないが、五輪のイメージに悪影響があるため、原作者として提案を取り下げたい」と佐野氏の側から取り下げの申し出があり、三者で見解が一致したのだという。

ここでの流れを読む限り、組織委員会は「判断する立場」でないので判断せず、審査委員会は「一般国民にわかりにくい」と取り下げの根拠の理由を"国民”に求めた。つまり責任は"国民”にあると読め、こちらもデザインに関する判断や評価を明らかにしてない。そのために「本来は正しいものなのに理解が得られないために取り下げる」という図式が、落とし所になってしまっているわけだ。

こうしてみると、デザインを「理解できない国民」や、佐野氏への誹謗中傷をした「ネット民」が悪いし今回の責任がある、というのが彼らの「本音」なのではないだろうか。

 

(略)

 

個人的には、今回徹底的に追及するネット民は、新たな問題行動を見つけた場合には実名だろうが匿名だろうが、同じように追及することになるだろうと思うし、事実犯罪行為が疑われる匿名のTwitterアカウントの実名晒しは頻繁に起きていた。だから今回の騒動で実名・匿名論を蒸し返すのは(これまでと同じように)スジが悪いと感じずにはいられない。

萎縮については……。著作権侵害のようなイリーガルな行為をそもそもしていなければ問題はないわけだし、「元ネタ」や「インスパイヤ」されたものがあったとすれば、それに対するリスペクトが相手や見る者にも伝わるようにデザインするなり、言葉を尽くして説明をすればいいはずだ。今回、佐野氏はここが決定的に欠けていた。

翻って、リエージュ劇場とロゴ作者のオリビエ・ドビ氏はリエージュの裁判所で使用差し止めを求めて提訴しており、IOC本部があるスイスでも裁判する構えを見せている。使用した企業や公的機関に対して賠償金も求めているので、今回の取り下げで提訴を止めることになるのか不透明だ。ドビ氏による模倣との訴えに対して、9月1日の会見の内容は「ゼロ回答」なのではとも感じるし、これで幕引きとはいかないのではないか。

その上で、「元ネタ」からの指摘よりもネットでの追及の方を大きく捉え、「事実を曲げて撤回させた」ということが公的な見解となり、なおかつクリエイティブな活動の「萎縮」まで「ネットのせい」にされる空気が醸成されつつある。これでは「大勝利」どころか「悪者扱い」じゃん、と思うのは筆者だけだろうか。」

 

 

この話題はお腹いっぱいです。

個人的には、デザインとしては「似ている」と思っているので、前にも書きましたが、

 

「まず先発のデザインであることに敬意を表し、偶然にも似たデザインになってしまったことでの困惑を伝え、自分が同じ立場であればどうだったのか、の共感を示し、自身がこのデザインに至った経緯を発表し、異なるデザインであるとの理解を求める、なんなら直接お会いして……」

 

くらいのことをするべきだったと考えています。

パクったかどうかを証明するのは難しいんですから、あとは先発のデザインに対してどう考えているのかが重要なわけで。

ふじい氏がいうところの、

 

「「元ネタ」や「インスパイヤ」されたものがあったとすれば、それに対するリスペクトが相手や見る者にも伝わるようにデザインするなり、言葉を尽くして説明をすればいいはずだ。今回、佐野氏はここが決定的に欠けていた。」

 

なんだと思います。

リスクマネジメントができる人材がいなかったらしいですね、どこにも。

おまけに、どんどん後手後手で燃料投下するもんだから、焼け野原ですよ。

今後、どんなエンブレムが採用されるのかはわかりませんが、とりあえず今の審査委員は全員クビにしたほうがいいですよ。

この有様を見て、応募してまっとうに選ばれると思えますか?

 

「「オリジナルだと認識でき、専門家の間では分かり合えるが、一般国民には分かりにくい」」

 

……こんなこと言って平然としているやつは真っ先にクビです。

専門家のためのエンブレムじゃないでしょう。

ということは、こいつはそもそものコンセプトを理解していないことになります。

 

 

そりゃ受け入れられないよ。

 

 

 

デザイナー個人を「日本の恥」のように責めるのは詮無いことです。

すでにこの一件が「日本全体の恥」になっていますから。

ああ、恥ずかしい……こうやって衰えていくんでしょうか、国って。

 

 

この話題はお腹いっぱいです。

 

 

(元記事)

bylines.news.yahoo.co.jp