『「無責任に辺野古反対とは言えない」 民主・岡田代表』
(朝日新聞デジタル 2015/10/20)
以下引用。
「(米軍普天間飛行場の沖縄県名護市辺野古への移設について)沖縄のみなさんが反対するのは分かる。我々としては、対案がない状況で無責任に「辺野古反対」とは言えない。与党時代に国内で様々な案を検討したが(移設先は)見つからなかった。対案を見つけるとしたら、政府しかできない。政府には努力はしてもらいたいと思うが、簡単ではないことは、我々は分かっている。(沖縄県の翁長雄志知事と会談後、記者会見で)」
「与党時代に国内で様々な案を検討したが(移設先は)見つからなかった。」……そうでしたね、時の総理大臣が「腹案がある」とのたまって、「最低でも県外」と言いだした頃から、この人達大丈夫かいな、と思い始めたような気がします。
あ、いえ、私は別に県外でもいいと思います。
なんなら大阪でも、名古屋でも、持ってこられるなら持ってこればいい、と。
しかし、結果それが国防に帰するのか、と言われると心もとない。
沖縄が大陸に侵略されてもよいとか、独立するとか、そういったことならまぁしょうがないですが、国益にはならんでしょうから。
「対案を見つけるとしたら、政府しかできない。」……現与党の考え方はすでに提示されていますし、それに従って動き始めていますし。
というか、お前らが政府だった時に見つからなかった対案が、どうして自民党になったら出てくると思うのか。
政府に打出の小槌があるのなら、お前らだってふれただろう。
○こちら===>>>
以下引用。
「米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の移設先とされる同県名護市辺野古沿岸部の埋め立て承認を翁長雄志(おながたけし)知事が取り消したことについて、宜野湾市民12人が20日、取り消しの無効確認などを求める訴訟を那覇地裁に起こした。12月をめどに原告を100人以上にするという。
訴状によると、原告らは「承認に法的瑕疵(かし)はなく、取り消しは違法であり、知事権限の乱用」と主張。普天間飛行場が固定化されて住民への生存権侵害が継続されるとしている。原告1人あたり1千万円の慰謝料を県と知事に求めた。
記者会見した平安座唯雄(へんざただお)・原告団長(70)は「残念ながら辺野古以外に移設先はない」と述べ、原告弁護団の徳永信一弁護士は「沖縄に基地が集中する理不尽は理解している。しかし、現存する危険性も直視してほしい」と語った。」
当たり前な話ですが、沖縄も一枚板ではないんですね。
この訴訟がどうなるかはわかりませんが、少なくとも国防は国策ですから、「承認に法的瑕疵(かし)はなく、取り消しは違法であり、知事権限の乱用」という主張も的外れではないように思います。
ところで、
↑という本があります。
東大の入試問題から、面白い問題を取り上げて、日本史を掘り下げる、というシリーズの本です。
書いているのは、東進ハイスクールの講師さんです。
この中から一章、引用してみようと思います。
「14 琉球王府が語った架空の「トカラ島」とは?(06年度第3問)
小国が生き延びる<知恵>
日本地図では沖縄は日本の南西端ですが、世界地図で見れば東〜東南アジアの海上の要所に位置することがわかります。室町時代には、この地理的な条件を生かして琉球王国は貿易国家として繁栄しました。
一方、戦後には、その戦略的・軍事的価値ゆえに本土から切り離されてアメリカ軍の軍政下に置かれ、現在も国土面積のわずか1%にすぎない沖縄県に国内の約75%の基地が集中している状態となっています。
さて、19世紀半ばの幕末に列強諸国が江戸幕府に開国を迫っていたころ、琉球にも多くの使節が訪れました(ペリーも那覇に立ち寄ってから浦賀に来航しています)。東アジア市場への進出をもくろも列強諸国は、貿易船や捕鯨船の寄港地としての価値を琉球に認めていたのです。
しかし、時の琉球王府は、次の東大日本史の問題で取り上げられているように、「トカラ島」という架空の島を持ち出してフランス海軍提督の要求を突っぱねました。そこには、小国が大国に挟まれて生き延びるための外交の<知恵>がありました。そして、それは現代の外交においても活かされるべきものです。
問題14 次の文章(1)(2)は、1846年にフランス海軍提督が琉球王府に通商条約締結を求めたときの往復文書の要約である。これらを読み、左記の設問A・Bに答えなさい。
(1)[海軍帝国の申し入れ]北山と南山の王国を中山に併合した尚巴志と、貿易の発展に寄与した尚真との、両王の栄光の時代を思い出されたい。貴国の船はコーチシナ(現在のベトナム)や朝鮮、マラッカでもその姿が見かけられた。あのすばらしい時代はどうなったのか。
(2)[琉球王府の返事]当国は小さく、穀物も産物も少ないのです。先の明王朝から現在まで、中国の冊封国となり、代々王位を与えられ属国としての義務を果たしています。福建に朝貢に行くときに、必需品のほかに絹などを買い求めます。朝貢品や中国で売るための輸出品は、当国に隣接している日本のトカラ島で買う以外に入手することはできません。その他に米、薪、鉄鍋、綿、茶などがトカラ島の商人によって日本から運ばれ、当国の黒砂糖、酒、それに福建からの商品と交換されています。もし、貴国と友好通商関係を結べば、トカラ島の商人たちは、日本の法律によって来ることが禁じられます。すると朝貢品を納められず、当国は存続できないのです。
フォルカード『幕末日仏交流記』
設問
A 15世紀に琉球が、海外貿易に積極的に乗り出したのはなぜか。中国との関係をふまえて、2行(60字)以内で説明しなさい。
B トカラ島は実在の「吐噶喇列島」とは別の、架空の島である。こうした架空の話により、琉球王府が隠そうとした国際関係はどのようなものであったか。歴史的経緯を含めて、4行(120字)以内で説明しなさい。
(略)
琉球王府は独立を望まなかった
さて、設問Bは、「吐噶喇列島」という架空の話で「琉球王府が隠そうとした国際関係」について問うています。予備校界で流通する解答例は、いま見た日中両属関係について指摘して終わっているのですが、何か腑に落ちません。
というのも、もしも琉球王府が日中双方からの独立を望んでいるのならば、列強からの施設はホワイト・ナイト(白馬の騎士)であって、それを「隠そうと」する必要などないからです。裏返せば、琉球王府は日中両属関係を維持したいと考えているのであって、そう考える理由にこそ本当に<隠したいもの>があるということになります。
19世紀前半になると、薩摩藩は琉球ルートを利用した中国(清)との密貿易に乗り出します。松前産の俵物(前問参照)や専売制を布いた奄美産の黒砂糖を、長崎出島を通さずに取引し、利益を上げようとしたのです。そこには、幕府の「鎖国」政策(前著問題14参照)の動揺が如実にあらわれています。また、琉球にとっても米などの必需品の入手に薩摩は欠かせない存在でした。
資料文(2)で語られている「吐噶喇列島」が薩摩であることは、もう明らかでしょう。そして、琉球王府は、列強と「友好通商関係を結べば」、こうした貿易が途絶えて「当国は存続できない」と訴えているのです。
日中両属の下で薩摩や幕府に頭を下げ、密貿易に利用されながらも、それを逆利用する形で必需品を手に入れているのが、対外関係上最も安定しているということを、琉球王府はわかっていました。
独立を望まない。これこそが、琉球王府が生き延びる知恵だったのです。」
東京大学という日本随一の大学の問題を、東進ハイスクールというこれまた日本随一の予備校の講師さんが解説している、ということを念頭に置いていただきたいのですが。
ここで書かれているのは、地政学的な位置上の宿命(変えられない)に対して、琉球がぎりぎりでくぐり抜けてきたサバイバルの戦略です。
全部は引用していないので分かりづらいかもしれないですが、明との貿易(冊封関係)で存在感を増した琉球は、その後に倭寇(後期の大陸・半島人が主たる倭寇)が猛威をふるい、西洋人がインドに到達すると、東〜東南アジア圏での貿易の優位性を失います。
その後は、本土からの侵攻がありまして、名目上は幕府の、実質的には薩摩藩の支配下に入ります。
さらには、大陸との冊封関係は維持されていますから、独立国でもあります(日本は、大陸の国との冊封関係はとうの昔の絶っていますから、日本の支配下にある国が大陸の国と冊封関係に入ることを許すはずがありません=つまり独立国なのです)。
こうして、多面的に振舞うことで生き延びてきた琉球にとっては、西洋列強と「対等」に(不平等ではありますが)通商関係を結んでしまうことは、大陸(清)との冊封関係、また日本(薩摩藩)の支配下にあるという関係、どちらも失うことでした。
琉球が生き残るためには、二つの勢力の間でうまく振舞うことしかなかった、というわけです。
しかし、それもだんだんと時代が許さなくなってくるんですね。
結局沖縄は、日本の一地方でありたいのでしょうか。
それとも、独立したいのでしょうか。
民衆はともかく、為政者は、この本によれば、独立は望んでいなかったようですから、沖縄独立論というのは、民族自決だのなんだのという概念が出てきた最近の話だと思います。
しかし現代、もはや大陸に朝貢もしておらず、日本の一部となっている状況での独立が何を意味するのかくらいは、誰しもわかっておいでではないか、と。
それでも許せないことがあるのもわかります。
難しい話ですが、日本が軍隊を持ったら、沖縄には基地が残ると思います。
地政学的な運命を変えることは難しいですから。
↑琉球に関しては、こちらの小説がオススメ。
ところで、二つの勢力の間でうまく振る舞おうとしていた、地政学的に沖縄とよく似た場所(半島)があるんですが……あちらは独立国ですからねぇ、どうするんでしょうか。
(元記事)