いや別に、表紙につられて買ったわけではないです。
高井忍氏は『柳生十兵衛秘剣考』や『蜃気楼の王国』などを書かれた方で、大好きなもので。
『蜃気楼の王国』は一押しです。
歴史に詳しい(否歴女)女子高生扇ヶ谷姫之とその同級生でロシアからの留学生ナスチャ、さらに朝比奈亜沙日(立派な歴女)が繰り広げる、「歴史の謎の斬新な解釈」合戦。
本能寺の変、ヤマトタケル、大奥、称徳天皇と道鏡、というネタを元に、「斬新な解釈」について女子高生ががんがんやりあいます。
なぜやりあうのか、というと、このお題での「斬新な解釈」を出版社が募集しているからなのです。
『歴史読本』なくなっちゃったしなぁ……。
むしろ「と」学会?
ま、ともかく、古代史妄想が趣味の人間が偉そうに言えることではないのですが、
「書かないといけないのは謎解きじゃなくて、他の投稿者を抑えて受賞できる、センセーショナルな新解釈。史実はこの際無視でかまわない。都合の悪いことは伏せて、もっともらしく話を繋げていって、なるべくボロを出さないような真相を捏造する」(p29)
という登場人物の言葉が耳に痛い。
人間は、「擬似歴史」が好きなのですね。
「陰謀論」でもかまいません。
それが「物語」のうちにあるならそれでいいのですが、受け継がれていくにつれて何となくの「真相」にすり変わったりしてしまうので気をつけなければいけません。
事実は一つ。
歴史は事実の解釈なのです。
そして、妥当な解釈とは、同時代の人間による、(できるだけ)客観的な資料に基づくもの。
しかし、実際のところはそんなも望めなかったりするので、たくさんの資料で妥当性を担保するしかないのです。
古代史妄想が捗るのは、この「たくさんの資料」という部分で、近現代史からすれば圧倒的に資料が少ないからなんですね。
考古学的資料も重要ですが、捏造できますし。
どこまでいっても「妥当性」の話にしかならないのです。
私のような古代史妄想好きは、状況証拠だけで公判を維持しようとする検察官みたいなものですから、冤罪ももちろんあり得ます。
ですので、「妄想」と断っておくしかないのです。
というわけでみなさんも、「ゾンビ」のように蘇る「歴史の真相」にはご注意ください〜。