夏休みの宿題読書感想文にはあまり向いていない薄い本シリーズ。
すみません、芦辺さん大好きなもので。
このパスティーシュも、第三弾……かな?
今回収録されているのは中編2本、しかも「金田一耕助、パノラマ島へ行く」と「明智小五郎、獄門島へ行く」ですから。
二大巨匠の二大探偵が、二大「孤島もの」にそれぞれ乗り込む、というなんと豪華なパスティーシュ、妄想なんでしょう。
技巧派芦辺先生のことですので、『パノラマ島綺譚』(この表記が好きです)、『獄門島』のどちらを読んでいなくても楽しめますし、これを機にどちらも読んでみたくなること請け合いです。
もちろん、すでに読了の方は、いろいろとニヤニヤしながら楽しめるという辺り、さすが本格マエストロの芦辺さんです。
あらすじを書いてしまうといろいろあれなんですが……要するに、この世界は大乱歩・大横溝の小説世界がそれぞれ現実となっていて、しかも同じ世界にある、という約束で進んでおりますので、金田一耕助がかつて毒々しいながらも一種の楽園と称された志摩のパノラマ島を訪れることも、明智小五郎が美しい三姉妹を無残に飲み込んだO県沖合の獄門島に向かうことも、あり得る現実なのです。
『獄門島』のほうは、映像化されたものを何度か見ているはずで、もちろん小説も読んでいますが、どうしてなのか内容がほとんど思い出せません……なんででしょう。
『パノラマ島綺譚』は、舞台になったものを見てみたいと思いつつ、小説も読んでいますが、丸尾末広先生の漫画版もお見逃しなく、な感じです。
- 作者: 横溝正史
- 出版社/メーカー: 角川書店(角川グループパブリッシング)
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- メディア: 文庫
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名作のパスティーシュをクロスオーバーさせて、なおかつ本格に仕立て上げるマエストロっぷり……芦辺先生ならでは、で大変楽しめました。
ただ、何しろパスティーシュなので、読書感想文には向きませんし、原作のほうも『獄門島』はあれがあれですし、『パノラマ島綺譚』ももっとあれなので、小学生の読書感想文には向かないかなぁ……。