一人ロリンズ祭りも、遡ってついにデビュー作。
考古学者のアシュリー・カーターは、ニューメキシコの遺跡発掘現場にいたが、そのベースにアメリカ軍を引き連れたブレイクリー博士がやってくる。
彼は高額の報酬を提示し、ある調査チームに加わるように言った。
彼が持ってきたものを見て、アシュリーは一人息子のジェイソン同様に驚きを隠せなかった。
原始時代の造形物、豊饒を司ると思われる女性の偶像。
それは、ダイヤモンドから削り出されたものだった。
チームに加わることを承知すると、ブレイクリーはそれがどこで発見されたのかを告げる。
南極大陸。
その、地下。
洞窟探検の専門家であるベンジャミン・ブラストは、オーストラリアでちょっとした、法に触れることをして牢の中にいた。
そこに、軍時代の上官が訪ねてくる。
彼に、ある国際探検チームに参加すれば、釈放されるという条件を携えて。
アボリジニの血を引くベンジャミンは、祖父と訪れた洞窟の夢を見た。
何者かが彼に語りかけてくる、「おまえは仲間だ」と。
牢に入れられていることが、トラウマを引き戻したのだ、とベンジャミンは思った。
そして、牢から出られるのであれば、たとえきな臭い陰謀が控えていたとしても、上官の持ってきた話に乗らないわけにはいかなかった。
チームの目的地は、南極大陸沖合のロス島にあるエレバス火山の地下。
数百キロにわたって張り巡らされた洞窟。
そこには、最古で500万年前と測定された住居があり、偶像が彫られたのもそこだった。
つまり、人が住み、文化が存在した。
驚きを隠せないアシュリーとベンジャミン。
その未知の空間に、地質学者、生物学者、そしてアメリカの海兵隊員や特殊部隊隊員とともに挑む。
しかし、ブレイクリー博士には、参加者に伝えていないことがあった。
その洞窟にアタックするのは、初めてではないのだ……。
というわけで、デビュー作の主人公がシングルマザー、学会からははじき出され、生きるためには10万ドルの報酬に目もくらむ現実的な女性が選ばれているのが、現代的な作家だな、とちょっと思いました。
まさか『トゥーム・レイダース』が頭にあったわけではありますまい(……たぶん)。
この探検に、アシュリーが息子のジェイソンを連れていくところが一つのミソで、もちろんあとあと話に絡んできます。
アシュリーは、ロリンズものには珍しく、女性としてリーダーを務めます(これ以後、能力のある女性は出てきても、リーダーシップを発揮するべく配置された女性はいなかったように思います)。
それがチームの力学にも影響し、面白いです。
映画にしたらウケると思うけどなぁ……。
南極の地下に謎の世界が……という、古典SFのような舞台なんですが、そこはロリンズ先生、ひねりがぐいっと効いています。
何しろそこにいる……おっと、いかんいかん。
とにかく、目の付け所が抜群です。
いや、他にも似たような設定があったような気がしたんですが、それがこういう形で……『○ャバ○○ッ○ー』かい!って突っ込みそうになりました……おっと、いかんいかん。
冷酷非道な謎の美女こそいないものの、盛りだくさんの内容です。
まだロリンズ作品未読の方は、こちらを読んでから、『アマゾニア』『アイス・ハント』と進み、そこから<シグマフォース>シリーズへと進まれると、その洗練度合いと、お約束芸と、独創的な妄想にハマっていくことと思います。
ただ、ノンシリーズの訴求力はちょっと弱いので、『ウバールの悪魔』か『マギの聖骨』から入った方がいいような気もします……なかなか難しい。
とにかく、ロリンズ先生、<シグマフォース>もノンシリーズも、続編楽しみにしておりますよ!
「「ベンジャミンと話したんだ。ほかにも教えてもらった。ええとなんだっけ? そうそう、<バージン・スルー>だ」
「なんですって?」アシュリーはベンジャミンに顔を向けた。「息子にいったい何を教えているの?」
「バージン・スルー」ベンジャミンが笑いを堪えようと顔を引き攣らせて言った。「人跡未踏のトンネル、っていうような意味だよ」
「あら」恥ずかしさがこみ上げた。「てっきりーー」
ベンジャミンがにやりと笑った。「何考えていたかは、想像がつく」」(上、p79)
下ネタかい!