アンソロジーをたまにはね、と思って買ってみました。
綾辻行人氏は「再生」。
お得意のホラーテイストなお話は、「どこを切断されても、再び生えてきてしまう」という女性を巡る話。
このネタと絢辻さんが絡めば、そっちになるね、という予想がつくので、どんでん返しの破壊力は50パーセントくらい。
『○ッ○・○メ○○ー』って映画を思い出しました(……ホラー嫌いなのに、見たんですよね……そして一層ホラーが嫌いになった、シンプルに恐ろしい話です)。
有栖川有栖氏は「書く機械(ライティング・マシン)」。
魅力的だが遅筆な小説家に、編集者が驚きの提案をする、というお話。
書くことに対する諧謔に満ちたお話で、どんでん返しの破壊力は60パーセント。
途中まで読むと、オチが二つくらい浮かぶんですが、そのうちの一つが当たってしまったもので。
短編ですから、そうそうとんでもないオチはつけられないわけですが。
有栖川さんの切れ味鋭い短編といったら、「四百字詰原稿用紙四枚で書いた」と言われる、あのショートショート。
あれが大好きです。
近所にある開かずの蔵が開くのを見てしまった高校生の話。
その中では、中年男性と、高校でも有名な美少女。
一体何をしていたんだろう……と悩む少年が遭遇したのは殺人事件。
その容疑者が美少女なんだけど、アリバイを証明してしまうのが少年。
つまり、その蔵の中にいた、というのを見てしまったのだから。
完全なアリバイ……があるのに、彼女はなんと自分の犯行を主張している、という。
<タック&タカチ>シリーズを髣髴とさせる、転々酩酊パズラーです。
いつも通りのかなりな豪腕(だから好き)なんですが、ある一つの点に絞ると、構図が逆転するという鮮やかさで、どんでん返しの破壊力は80パーセント。
ただ、そのためにかなりごちゃごちゃしてくるのが惜しいです。
西澤ファンにはなんてことのないごちゃごちゃ加減なんですけれど。
<タック&タカチ>シリーズは、高校生〜大学生にはオススメですよ〜。
貫井徳郎氏は「蝶番の問題」。
吉祥院先輩、という名探偵……じゃない小説家と、その後輩である刑事が登場します。
講談社から出ている短編集でも活躍する二人です。
このお話も、そっちに入っていたんじゃなかったかな……『被害者は誰?』ですけれど。
えと……この話は、作中作を推理する話です。
奥多摩の貸別荘で連続殺人が起こり、その被害者の一人が事件の手記を残していた、という。
手記ですから、いろいろと疑う要素が満載なわけです。
個人的には、どんでん返しの破壊力85パーセントくらい。
「あ、そうか!」と膝を打ったときには、ときすでに遅し。
気づけるはずなんですけれどねぇ……。
で、ふっと「北○タ○○○○」を思い出しました(伏字の意味あるのか?)。
貫井さんは、がっつりヘビーなものをあまり読んでいないのですけれども、そうですよね、『慟哭』は読まないといけないですよね……。
先週、『一の悲劇』がドラマ化されていたと、放送終了直前に気付いて、悶え死にそうになったのりりんファンの私です(DVDにならないかな……)。
それはともかく、これは『法月綸太郎の冒険』に収録されているので、かなり昔に読んでいましたし、実に一番好きな、鋭い短編でもあると思っています。
どんでん返しの破壊力は90パーセント。
法月綸太郎は、大学時代の知り合いの元を訪ねる。
同じく、大学時代の知り合いが殺人事件を犯したために、専門的な助言を得たい、と思ったからだ。
その犯人は、自分が殺した恋人の肉を食べ続けていたのだという。
うーん、もうこれだけでかなり嫌〜な感じがするのですが、なぜか私の頭の中を離れないんですよねこのテーマ……。
東川篤哉氏は「藤枝邸の完全なる密室」。
『謎解きはディナーのあとで』で人気作家の仲間入りを果たした東川氏ですが、私は『館島』くらいしか読んでいないと思います……いや、あれは面白かったですよ、○○三○の「○○」を思わせる……ああいえいえ。
ある裕福な男の遺産を狙った甥が、完全犯罪を成し遂げるために、家の地下に密室を作り上げた。
ところが、そこにたまたま現れた探偵事務所の調査員によって、彼の計画が破綻していく……という、倒叙ものと密室を合成したようなお話です。
それを、もうちょっと大きな仕掛けで覆っておくと、こんな感じになりますよ、と。
どんでん返しの破壊力は65パーセントくらいかな……別に嫌いではないのですが、登場人物がやたらと「ひえぇぇぇ」とか言うのでなんとなく興ざめしてしまって。
あれ、もともとの作風ですかね?
だったら水が合わないのかなぁ……。
オチは気に入っていますが、こういうオチって案外多いのかも、というのが最近の感想。
「カニバリズム小論」が一押しです。
それが気に入ったら、是非とも『パズル崩壊』を。
そこから『しらみつぶしの時計』に進んでいただけると。
のりりんワールドにようこそ!
それにしても、ドラマ『一の悲劇』を見逃したのが、ここ最近で一番悔やまれる悔やまれる……。