ここ何年か、海外のミステリーがよく邦訳されるようになってきたような気がします。
いや、昔からそうじゃないか、というのはもちろんそうなんですが、コーンウェルとかデイーヴァーとかに隠れて邦訳されていた良著っていうのに、私の目が行き届かなかっただけなのかもしれないです。
ドイツや北欧、オーストラリアと様々なところから入ってくるのですが、当たり前のことながら、警察小説が多いのですね(変態はポール・アルテくらいで……あれそういえば、続きの邦訳がないな……殊能先生……涙)。
で、本著も、オーストラリア発の警察小説シリーズ物ですが、うーんどうだろう、あまりオーストラリア、ということを意識しなくてもいいのかもしれないです。
フランク・ベネットは、シドニー州都警察の殺人課に異動してきたばかり(かつての相棒は自殺していた)。
新たな場所で相棒になるエデン・アーチャーという女性刑事は、以前の相棒を殉職で亡くしています。
お互いの喪失感が絆を深めるのか、あるいはエデンが敏腕で長身で鍛え上げられた肉体を持つ美人だからなのか、フランクが近づこうとすると、同じ課にはエリックという、エデンの兄がいることが判明します(もちろん、フランクとエリックは敵対するわけですが)。
二人が組んで最初の事件は、シドニーのマリーナからの通報でした。
麻薬中毒者が、何者かに、足に鎖を結び付けられて海の中に叩き落とされた、と(彼は、何とか自分の足をへし折ることで、助かります)。
その麻薬中毒者は、誰かがマリーナに、スチール製の収納ボックスを運び込んだところを目撃しました。
どうやら、そのボックスを海に投げ入れたらしい。
そのボックスを探し始める前に、麻薬中毒者が言いました。
「海の底にもボックスがあったんだよ。ごろごろと山のようにね」
合計20個のボックスからは、それぞれ詰め込まれた他殺体と思われる遺体が発見されたのです。
と、メインのストーリーは、この連続死体遺棄事件の謎を追うことなのですが(あ、本格していないので、サスペンスとして読んでいただいたほうがいいかと)、もう一つ別の物語が挿入されており、そちらではどうやら裏社会で揉め事を解決しているらしい「ハデス」という人物が描かれています。
その「ハデス」のところに、ある犯罪者たちがもみ消しを依頼しにやってきます。
「ハデス」は、自らに何らかの条件を課して、死体の処理をしているのですが、その日やってきた犯罪者たちは彼の条件に当てはまらなかったのでした(ということで、処理される羽目になったわけですが)。
てっきりまた罪なきものの死体だと「ハデス」は思ったのですが、その二つの死体は、子供で、しかも生きていたのです。
裏社会とつながりの深い「ハデス」は、曰くありの子供達を育てなければならなくなったのでした。
本格ではないので、他にもいろいろなことが途中でわかってきて、サスペンスを盛り上げます(「ハデス」の育てる子供はどうなったのか、なぜ遺体は遺棄されたのか、フランクのちょっとしたロマンス……とか)。
しかし、何といいますか、警察小説の主人公は酷い目に遭うしかないのかな、というのが、これまで翻訳されている、最近の警察小説を読んでの感想です。
ジャック・カーリーは、それでも結構日本人が好きそうな書かれ方なので、あまり思わなかったのですが……ルメートルのせいかな……。
ああ、でも、マイケル・スレイドがもっとひどいか……あれ警察小説なのかな……。
単発で終わってもいい感じですが、続編もあるようなので、どのように展開させていくのかちょっと楽しみです。
映画にしやすそうですけれど……そういえば、カーリーの『百番目の男』を映画化するとかいう話はどうなったんでしょうね。
日本じゃやらないか……あんなオチ(褒めてます)。
……あれ、引用するところにチェックを入れてないな。
下手に引用すると、いろいろネタバレしてしまうので(あ、そっちの意味ではないですよ)、やめておきます。