- 作者: サイモンシン,Simon Singh,青木薫
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2007/06/28
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よく読まれてますねぇ。
何を思ったか、購入してみて、なかなか読み進められなかったのですが、昨年の10月頃に一気に読んだんだったと思います(うろ覚え)。
内容といえば、古典的暗号(カエサル暗号)から始まり、様々なエピソードに添えて世界史的事件の裏側で暗号がどのように扱われてきたか、が書かれています。
スコットランドのメアリ女王のケース、ルイ14世と鉄仮面、バベッジ機関、暗号機とその頂点とされるエニグマ、未解読の古代文字を暗号とみなせば線文字B、そして量子暗号……とまぁ暗号の仕組みがこれでもかと紹介されていて、正直頭が痛くなります。
しかも、読者への挑戦つき(それもガチすぎる暗号なので……すでに2000年の段階で解かれているそうですが、この本で使われている暗号の仕組みを総動員して、さらにそこに何かひらめきがないと解けないもの……なのかな)。
ミステリ好きなら読んで損はないと思いますし、自分でもいくつか考えたりしたいと思ったりもするかもしれないですし……現実世界の暗号は、ミステリのように解かれることを前提に考えられていないので……いや待て現実の暗号だってしかるべき人間には解かれるように作られているはずだが……そうか、読者を想定していない、ということでいいのか……ま、ともかく、読み終えるとちょっと賢くなったように思えますが、雑学的に扱うには内容がガチすぎるのでやめたほうがいいかもしれません。
「ムスリム文明は、暗号解読法にとって理想的な揺籃だった。というのも、イスラム(唯一神アッラーに絶対的に服従すること)は人間活動のあらゆる分野に正義を求めたが、そのためには知識(イルム/努力によって習得される知識)がひつ王だとされていたからである。ムスリムは誰もみな、あらゆるタイプの知識を追求する義務を負っている。」(上、p45)
神に仕える、というだけで誇り高くあった時代が……。
「暗号について書かれた西洋の書物として知られている中でもっとも古いのは、十三世紀イングランドのフランシスコ会修道士だった万能の才人、ロジャー・ベーコンによる『秘密の技法と魔法の無効性についての書簡』である。この書にはメッセージを秘密にするための七つの方法が説明され、それとともに次のような警告がなされている。「一般大衆の目から隠しもせずに秘密を書くものは、頭がどうかしている」」(上、p66)
もうなんか、書簡の名前とロジャー・ベーコンってだけでくらくらします。
「バベッジが取り組んだ問題は、科学や工学の領域にとどまらない。かつて郵便料金は、手紙を送る距離によって定められていた。しかしバベッジは、手紙ごとに料金を計算する労働コストは郵便料金を上回ることを指摘し、全国どこでも均一料金で手紙を送れるという今日のシステムを提案したのだった。」(上、p133)
バベッジすげぇ。
「ホールが英国外相アーサー・バルフォアに手渡した電報は、こうして入手したメキシコ版だった。二月二十三日、バルフォアはアメリカ大使ウォルター・ページと会見し、ツィンマーマン電報を見せた。後にバルフォアはこのときのことを、「私の人生で最高にドラマティックな瞬間」だったと述べている。それから四日後、ウィルソン大統領は自ら「雄弁なる証拠」と呼んだものを目にした。ドイツは、アメリカ本土を攻撃させようとしていたのだ。
ツィンマーマン電報は新聞に発表され、アメリカ国民はドイツの腹の内を見せつけられた。アメリカの世論は断固報復すべしというものだったが、政府内には一抹の不安があった。その電報は、アメリカを戦争に引き入れようとするイギリスのでっち上げかもしれなかったからである。」(上、p210)
疑心暗鬼。
「暗号機としてもっとも古いものは、十五世紀イタリアの建築家で、多アルファベット暗号の生みの親の一人でもあるレオン・アルベルティが発明した暗号円盤である。」(上、p229)
「暗号機」……かっこいい(中二病的に)。
「チューリングはこの目標に奮い立ち、一九三七年、「計算可能な数について」という、彼の仕事の中で最大の影響力をもつことになる論文を発表した。チューリングの生涯を描いたヒュー・ホワイトモアの劇『暗号を破る』の中で、登場人物の一人がチューリングにその論文の意味を尋ねる。チューリングはこう答えた。「これは、正しいか、間違っているかに関する論文だよ。一般的な言葉で言えばね。数理論理学の専門的な論文だけれど、正しいことと間違ったことを区別するのは難しいという話でもある。人はーーたいていの人はーー数学においては何が正しくて何が間違っているかは常にはっきりしていると思っている。だが、そうじゃない。これからはもう、そうじゃないんだ」」(上、p301)
数理論理学の本を買ってあります……積んであります……。
「たとえば一六五二年にはドイツのイエズス会士アタナシウス・キルヒャーが、寓意的な解釈による『エジプトのオイディプス』という辞書を出版し、それを用いて荒唐無稽な翻訳を行った。例えばキルヒャーは、わずかばかりのヒエログリフを(今日のわれわれは、それが「アプリエス」というファラオの名前にすぎないことを知っている)、なんと次のように翻訳したのである。「聖なるオシリスの恵みは、聖なる儀式と一団の霊によって招来されるべきものであり、その目的はナイルの恵みを得ることにある」現代のわれわれの目には、キルヒャーの翻訳は馬鹿げたものに見えるけれども、彼の翻訳が解読を志す者たちに与えた影響は甚大だった。キルヒャーは単なるエジプト学者にとどまらず、暗号に関する本を書き、古代の楽器エオリアん・ハープ(風琴)を復元し、映画の先駆けとなる魔法灯(ラテルナ・マギカ)を発明し、ヴェスヴィオ火山の火口に降りて”火山学の父”と呼ばれた人物だった。」(下、p34)
天才も人ですから、間違いもあるでしょう。
厄介なのは、「天才だから間違えない」と思っている凡人どものほうですね。
「警察が恐れるのは、インターネットと暗号の使用により、犯罪者間の通信および協力関係が助長されることである。とりわけ、もっとも暗号の恩恵を受けると考えられている”情報黙示録の四騎士(麻薬の売人、組織犯罪、テロリスト、小児性愛者)”の暗躍が懸念されている。」(下、p205)
始まってます。