ロリンズ好きの私が、出版社と装丁の具合から、<Σフォース>シリーズと間違えて買った、というのは内緒(阿呆)。
MITに在籍するジェレミーは、双子の兄ジャックとのちょっとした諍いから、「世界の七不思議」について調べ始めます。
この世には二つの「七不思議」、古代ギリシアの時代にフィロンが定めたとされる「世界の七不思議」と、2007年に選定された現代版「世界の七不思議」。
古代の「世界の七不思議」は、「ギザの大ピラミッド」「バビロンの空中庭園」「エフェソスのアルテミス神殿」「オリンピアのゼウス像」「ハリカルナッソスのマウソロス霊廟」「ロドス島の巨人像」「アレクサンドリアの大灯台」。
現代の方はといえば、「万里の長城」「タージ・マハル」「コロッセオ」「ペトラ遺跡」「チェチェン・イツァ」「マチュ・ピチュ」「コルコバートのキリスト像」。
当然ながら、その二つに因果関係はないはずなのですが、ジェレミーは解析の結果、この二つの「七不思議」のうち6つの位置関係が、二重螺旋構造を描いている、という結論に達しました。
ということは、何らかの目的で、現代の「七不思議」が、古代の「七不思議」と関連するように選定されたことになります。
そのことに気づいたジェレミーは、何者かによって殺害されます。
一方、ブリストン大学で人類学を専攻するジャックは、助手のアンディとともにアルテミス神殿の発掘現場にいました。
遺跡奥深くに潜り込んだジャックは、そこで古代ギリシアの戦闘集団「アマゾーン」たちが、7等分された蛇のレリーフをどこかから持ち出して(あるいは持ち込んで)いる壁画を発見します。
そこに、ジェレミーの訃報が飛び込んできました。
また、ミシガン大学の植物学社スローンは、ローマのコロッセオの植生を調査していました。
ありえないほど昔の時代の痕跡を持つ植物が、コロッセオで発見されていたのです。
遺跡の地下深くに潜っていくと、そこで発見したのは多種多様な植物群と、蛇をかたどった謎のレリーフ。
そのレリーフは、金属製で、内部に歯車が仕込まれており、可動するようになっていました。
ジャックは、弟が自分に残したデータの入ったUSBメモリを手に入れ、そこで「七不思議」の関係性を知り、関係付けられていない「コルコバートのキリスト像」に何か秘密があるのではないか、と考え、ブラジルに向かいます。
というように、ロリンズ先生が書いていてもおかしくないような、科学×伝説ものだったので、ちょっとほっとしたのでした。
当然ですが、巨大な力を持つ敵も登場しますし、謎めいた美人も登場します(ハリウッド〜)。
しかも、この活字の大きさで、二分冊で、話が終わるのか、と思っていたら、解説で「三部作構想です」と知らされるという……一瞬ふざけんな、と思いました(ついでに、21世紀FOXが映画化権取得済みです)。
解説にも書かれていますが、「現代の『インディアナ・ジョーンズ』」として描かれているというのはうなずけます。
話は(ロリンズ先生ほど)小難しくなく、派手なアクションと大胆な舞台設定があり、世界中をぐるぐる回る(『80日間世界旅行』かよってくらい)ダイナミズム、ドローンを駆使した撮影とVFXの組み合わせで壮大な映画が出来上がるだろうことが、見る前から想像できてしまいます(『七不思議』のいくつかは、入り込むのが難しそうですから)。
うんちく大好き、ロリンズ先生大好きなかたにはちょっと物足りないかもしれないですが、『スプリガン』やら『QED』(高田崇史先生)なんかが好きな人でしたら、燃えると思います。
にしても、現地取材なんかを行うことを考えると、こういうエンタメでもアメリカにはなかなかかなわないんですね……(英語の論文を読める、というのが最大の利点だと思いますが……邦訳される文献も多いのですが、いかんせん絶対数がね……)。
「これは『ジャック・オ・ランタン』だわ。腐った木に育つ発光性菌類の一種よ」
「光るカビか?」
「キノコよ。この種族の細胞は発光酵素を放出するの。その酵素がルシフェリンと呼ばれる第二の物質と反応を起こして光るわけだけど、温度変化や微風なんかのちょっとした刺激でも発光するのよ。本当に興味深い適応反応だわ」(下、p24)
……「ジャック・オー・ランド」、行きたかったなぁ……。