べにーのDoc Hack

読んだら博めたり(読博)何かに毒を吐いたり(毒吐)する独白

『悪夢の水族館』木下半太

 

悪夢の水族館 (幻冬舎文庫)

悪夢の水族館 (幻冬舎文庫)

 

 ええと、たまには読書メモを更新しないとね、と思いまして。

2016年に読んだものなんですが(いろいろ、時間に追いつけていない)。

確か、『悪夢のエレベーター』を読んだ……気がするんですけれど、内容が思い出せない……。

洗脳を使って人の家に入り込んでいる男を中心に、その男のために殺人を犯そうとするもの、洗脳を解除しようとするもの、男を捉えようとするもの、が入り乱れて沖縄の水族館で立ち回る、その合間合間にそれぞれのエピソードが挿入されている、という、なんだろうミステリ、じゃないかサスペンスかな。

いわゆるソリッド・シチュエーション、ちょっと枠が大きい感じがしますが(エレベーターに比べれば)、それだけ普遍的なプロットにできる、という点では有利なのかなと思います。

洗脳された人間があのように振る舞えるのか(これをゾンビに置き換えればソリッド・シチュエーション・ホラーになりますね)、洗脳は解除できるのか(これに関しては昔からいろいろとありますね……洗脳ではないですが催眠、ということを考えると『まぼろし佑幻』とかかな……あれ、高河ゆん氏の何かも洗脳の話でしたっけ……『黒い羊は迷わない』もそうかな……)、しかしこういったことを追求していくとエンターテインメントの濃度が薄れますので、それができるという前提で成り立っている世界観、と考えるべきでしょう。

入り組んだストーリーを簡潔に描写するのはお見事、という感じです。

文体の濃度が薄いので、ちょっと私には合わないのですが。

最後までサスペンスを維持する展開は、ソリッド・シチュエーションにありがちな方向性ではなかったので、個人的に好ましかったです(こういう騙し方は好きです)。

さらっと読める、けれど単純ではない、そこで好き嫌いがわかれると思いますが、たまには本格でないものも、と思っていらっしゃるかたは手に取って見てはいかがかと。