べにーのDoc Hack

読んだら博めたり(読博)何かに毒を吐いたり(毒吐)する独白

『死体は笑みを招く』ネレ・ノイハウス

 

死体は笑みを招く (創元推理文庫)

死体は笑みを招く (創元推理文庫)

 

 

うーん、二年前……読書ペースが落ちてきてしまって、なかなか本が読めていないのですが、過去に読んだものを整理しておかなくては……と思って積んでみたら30冊くらい残ってました……読んでない本はもっとありますけども……地味に消化中。

さて、ドイツ発・警察小説の人気シリーズで、シリーズ3作目が最初に邦訳され、続いて4作目、1作目、そして今回が2作目。

純粋な探偵小説(そんなものがまだ存在するとして)と異なり、警察小説は必然的に社会派の要素を多分に取り入れることになります……とはいえ、本格ミステリというのは、実際には隠れ社会派であることが多いのですが……要するに、物語に関して、社会の実相やらに触れずに済むようなものはそうそうないし、現実社会に生きているものが物語に触れて、自分の社会での体験を投影して何がしかの連想をするな、ということのほうが無理なわけです。

日本では『相棒』というドラマが流行っており、また、毎回テレビドラマには警察の登場するものが人気を博しているわけで、小説でも警察小説というものは多い……んですが、不思議とこの国では未だに名探偵の登場する本格ミステリも多い……他の国の実情はよく知りませんが、10数年前にアルテが登場したことで話題になったフランスとかのことを考えると、特殊なんだろうなぁ日本……。

 

ええと、主人公は相変わらず、貴族の出自であるオリヴァー・フォン・ボーデンシュタイン首席警部と、ピア・キルヒホフ警部です。

クローンベルクのオペル動物園で遺体が発見された、という一報がオリヴァーに入り、現場に駆けつけると、まず片腕が、ついで片脚、と切断された部位が発見されます。

その後、牧草地で発見された遺体は、教師でありながら過激な動物愛護活動をしている人物とわかります。

動物園そのものに反対していた人物が、動物園で発見されたことで、園長のザンダーに疑いの目が向けられますが、調べていくとその人物はあちこちでトラブルを巻き起こしており、掘れば掘るほど容疑者が増えていく、という様相。

ケルクベルクとケーニヒシュタインを結ぶバイパス工事に自然保護の観点から反対しており、過激なウエブサイトでそのことを喧伝していたり、そのために市長や市会議員、工事に関連する会社とも揉め事が持ち上がっている、と。

 

 

 

ここからどうやって展開していくのか、と思っていたら、そうか現代警察小説ですから、エコ、菜食主義と、IT関係のネタが同時に成立するわけですね……。

シリーズもので、しかも警察小説となると、登場人物の人間関係やらドラマにも焦点を当てながら話を引っ張っていく、というのが常套手段で、これが名探偵ものだとなかなかそうはいかない(どうしても超人性を求められているところがあるんでしょうか)。

といっても、本作の続編は既訳ですので、そっちを読んで何が起こったのかは大体わかっているのですが、「ああ、そうだったのか」と腑に落ちるようなことが、オリヴァーにもピアにも起こります。

加えて、周辺の登場人物の関係性、それぞれのドラマも、簡潔ながら掘り下げられていて、結構な分厚さはあるとはいえ、スピード感が損なわれないのは文章の構成力なのでしょう。

面白かった……はずなんですが、あんまり覚えていないんですよね……個人的に、テーマが自分にとって身近だったためか、『白雪姫には死んでもらう』がよかったかなぁ……ただ、すでに6作目まで訳出されていますので、そのうちに……。

 

「オリヴァーは思わずニヤニヤした。彼が若い頃、自然保護を訴える若者はドイツ連邦軍のパーカを着て、パレスチナスカーフを首に巻き、髪の毛をわざと何日も洗わなかったりしたものだ。」(p13)

 

「二十七万平方メートルあります」ザンダー延長は腰に手を当てた。「そしてばらばら死体がどこに転がって射るかわからない。動物ふれあいコーナーは閉鎖しました。子どもが生首でも見つけようものなら悪夢です。」(p17)

 

伏線が巧妙、というか、さらっと書かれすぎているので、ミスリードにまんまと乗っかります(毎回)、そのあたりのテクニックはすごい……けどちょっとズルいかなぁ……。