よく知らないのですが、解説が法月綸太郎さんだったので購入した、のだと思います。
たぶん、面白かったんだと思うんですけれども、まあ記憶にないことといったら……文体が好みではなかったのかな。
主人公の医師は、とある病院に当直バイトをするために出かけます。
本来担当するはずだった先輩から頼まれて仕方なく交代したのでした。
到着してみると、病院の様子がおかしいのに気づきます。
ナースステーションに看護師がいない。
とりあえず看護師を探して病院を上っていくと、4階で看護師を見つけ、当直が交代したことを伝えます。
それからしばらく、うとうとしながら当直を務めていると、緊急の連絡が看護師から入ります。
療養型病院なので、急変があるのはおかしくないのですが、なぜか病室がないはずの1階に来て欲しい、と言われ、訝りながら下りていくと、外来待合室には、看護師2人と、傷ついた女性と、ピエロのマスクをかぶった男……その手にはリボルバー式の拳銃が握られていました。
ピエロ男曰く、コンビニ強盗をした際に人質にした女性が暴れたため拳銃で撃ってしまった、と。
だから、「この女を治療しろ」、と。
でなければ、強盗殺人で死刑になってしまうから、と。
突然乱入してきた人物によって、建物が簡易的なクローズドサークルになってしまう、というのは、本格ミステリよりはサスペンスやサバイバルもののホラーに多い設定でしょうか。
本格ミステリだと、大抵クローズドサークルへ仕立てるところから、サークル内にいる犯人の思惑が働いていることが多いのかな、と(もちろん、そればかりではないですが)。
ピエロ男の乱入、というわかりやすいギミックに、人質の女性を治療しろ、という不可思議な要求、という時点でサスペンスの発端としては魅力的ですが、ちょっと先が読めなさすぎるように思います。
もちろん、それが作者の意図なのですけれども……必要な伏線は張られていますし、文句はないのですが、うーん、なんだろう……ちょっと物足りない。
先に読み進めさせるための力、というんでしょうか、それが薄いかな……まあ、すれた本格読みの感想なので。
いや、実際には、サスペンス、ソリッドシチュエーション、脱出もの、本格といったもののハイブリッドになっていて、かなり緻密なプロットに支えられています。
また、医療ものですから、社会派要素も強くあります。
本格ミステリとして成立させるために、部外者(=探偵)を設定しているところが、そしてその登場の必然性がうまいですね。
この手のネタは、一発こっきりになりがちですが、何作も書かれているということは、他にもアイデアがあるようで……すばらしいですな。
もともと、専門職を持っている人が副業で作家をする、というのは珍しいことではないわけです。
ですから、小説のみで禄を食んでいる人間は、より尖っていかなくてはならないわけです。
大変だわ……。
というわけで、もう1作くらいは読んでみないといけないですね、と思って早二年……時間だけが過ぎていくなぁ……。