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読んだら博めたり(読博)何かに毒を吐いたり(毒吐)する独白

『六国史』遠藤慶太

 

六国史―日本書紀に始まる古代の「正史」 (中公新書)

六国史―日本書紀に始まる古代の「正史」 (中公新書)

 

 

本当は、「六国史」全部欲しいのですけれど、今の所『日本書紀』『続日本紀』止まり……結構高いんですよね、買おうと思うと。

というわけで、日本の古代における史書、『日本書紀』『続日本紀』『日本後紀』『続日本後紀』『日本文徳天皇実録』『日本三代実録』、をあわせて「六国史」と呼んでいます。

これらをまとめて概説した本、というのはあまりなかったように思いますので、飛びついたわけです。

 

日本書紀』30巻

続日本紀』40巻

日本後紀』※散逸

続日本後紀』18巻

日本文徳天皇実録』10巻

日本三代実録』50巻

 

巻数としてはこの程度で、『日本書紀』が扱っている時代が圧倒的に長い(神代から「持統天皇」まで)ため密度は薄く、それ以後は記事の内容もかなり細かくなってきており、あんまり面白くないなあと思ってしまうかもしれません(政治、行政に関することが増えてきてしまうので……というか、歴史書というのはそういうものなのです)。

日本書紀』を読んで(30巻とありますが、「欽明天皇」辺りまではさくさく読めます)面白い、と思って『続日本紀』に手を出すと「?」となってしまうかもです。

今は、現代語訳が出ていたりしますので(個人的には、原文書き下し文が欲しいですけれども)、ぜひ手に取ってみてください。

基本に立ち返るために、何度も手に取ってみたい本です。

ですので、内容をまとめてお伝えできません……一応章題くらいは。

 

「序章 六国史とは何か

第1章 日本最初の歴史書ー『日本書紀

1 全三〇巻の構成と記述ーー神代から四一代持統天皇まで

2 伝承と記録のあいだ

3 素材ー公文書から外国文献まで

第2章 天皇の歴史への執着ーー『続日本紀』『日本後紀

1 奈良時代史への入り口ーー『続日本紀

2 英主、桓武天皇の苦悩ーー特異な成立

3 太上天皇への史臣評ーー『日本後紀

第3章 成熟する平安の宮廷ーー『続日本後紀』『日本文徳天皇実録』『日本三代実録

1 秘薬を飲む天皇の世ーー『続日本後紀

2 摂関政治への傾斜ーー『日本文徳天皇実録

3 国史への到達点ーー『日本三代実録

第4章 国史を継ぐものーー中世、近世、近代のなかで

1 六国史後ーー「私撰国史」、日記による代替

2 卜部氏ーーいかに書き伝えられてきたか

3 出版文化による隆盛ーー江戸期から太平洋戦争まで」

 

いやあ、章題だけでどきどきしませんか?

しませんかそうですか。

 

 

「死没の表現には官人の序列に従った原則が適用される。律令の規定では、親王と三位以上の官人は「薨」、諸王と五位以上の官人は「卒」、庶人は「死」と区別された。君主を頂点とする序列の表現である。そのため原則から外れた死の表現には、貶めの意図がこめられた。」(p11)

 

「元嘉暦は旧く、儀鳳暦は新しい。ところが表に整理したように、『日本書紀』の暦法は逆転している。小川清彦はこの矛盾を指摘したのだ。」(p36)

 

「本文がなく割り書きだけがある異質なこの条文は、『日本書紀』が完成した当時からの条文である可能性がきわめて高い。異質な記述は、分駐によって中国史書との対応関係を表示したと考えられる。巻第九神功皇后紀を三世紀にあてはめるのが『日本書紀』の主張なのである。」(p41)

 

「『続日本紀』は編纂された現在に強い力点を置いた。『続日本紀』も最後になると、桓武天皇外戚にあたる百済王氏・土師氏・紀氏の改氏姓記事が詳しく掲載されている。藤原継縄や菅野真道ら撰者たちが『続日本紀』のなかに登場することも多い。これは現代史・同時代史の類であろう。

さまざまなことのあった長岡京に区切りをつけ、自らの治世についての評価を、歴史書によって確定させる。これが桓武天皇の意図であった。」(p99)

 

「たとえば巻第八「はつはな」は、寛弘五年(一〇〇八)九月の敦成親王誕生を描く。素材として『紫式部日記』を利用しながら、紫式部個人の私的な場面は採用せず、編年史書の体裁に合うように整えてある。仮名の文学を取り込んで仮名による歴史書を作るあたり、『栄花物語』が女性の手になるとされた理由である。赤染衛門紫式部など女性の活躍が、それまで漢文で書かれてきた歴史書に新たな可能性を開いた。」(p179)