べにーのDoc Hack

読んだら博めたり(読博)何かに毒を吐いたり(毒吐)する独白

『密室蒐集家』大山誠一郎

 

密室蒐集家 (文春文庫)

密室蒐集家 (文春文庫)

 

「密室蒐集家」と呼ばれる、年齢不詳の謎の人物が、密室の謎をざっくざっくと切り解いていく連作短編集。

「密室」は短編向きなのですねきっと(まぁ『人狼城の恐怖』とかありますが……)。

 

戦前の女学校で起こった、密室(音楽室)での射殺事件。

終戦のちの昭和28年、ある高級住宅での少年少女の刺殺事件。

1965年、刺殺されたはずの人物は窓から落下し、部屋には犯人はいない、しかし鍵とチェーンロックがかけられていた。

1985年、機械トリックで作られた「簡単な密室」は、なぜ作られなければならなかったのか。

2001年、自殺から救われた女性は、その助けてくれた医師の死に立ち会うことになる、現場の病院周辺には被害者のもの以外の足跡は残されていなかった。

 

と、時代を横断して活躍する「密室蒐集家」は、おそらく超自然の存在で、密室のあるところに現れて、謎が解けると去っていくのです。

某名探偵の孫や、某大人が子供に探偵のように、「そいつがいるところで殺人事件が起こる」という呪われた存在ではなく、事件が起こった後に出現する……ギリシア古典劇の「デウス・エクス・マキナ」のような存在でもあるのでしょう。

どの密室もひとひねり、ふたひねりくらいしてあるので、短編の名手にして不可能犯罪大好きなホックほどの素朴な明瞭さはなく、なかなか真相には至れません(私の名探偵能力が低いだけ)。

うーん、私は1985年の事件が、いろいろな要素が盛り込まれていて好みでしょうか。

やっぱり短編はいいですな……と思わせていただけた良作だと思います。