べにーのDoc Hack

読んだら博めたり(読博)何かに毒を吐いたり(毒吐)する独白

『魔界転生(上)(下) 山田風太郎ベストコレクション』山田風太郎

 

 

 せがわまさき先生のおかげで(?)、山田風太郎氏に触れ始めた私です。

子供の頃に、『南総里見八犬伝』への興味から『忍法八犬伝」は読んでいたようなんですが、『甲賀忍法帖』『柳生忍法帖』『魔界転生』といった名作を読み始めたのは大人になってからです。

山田風太郎氏は、時代物風ミステリの方が好きで、といっても「明治断頭台』くらいしか読んでないですが、ああ『警視庁草紙』を読みたいな……『棺の中の悦楽』も読み終えていない気がする……。

日本における伝奇ものとして考えると、映画にもなった(天草四郎をジュリーがやったあれがやっぱり随一ですかね)本作ですので、今更説明することもないと思いますが、ストーリーとしては、島原の乱の黒幕とされた森宗意軒が編み出した「忍法魔界転生」によって、天草四郎、荒木又右衛門、田村坊太郎、宝蔵院胤舜、柳生但馬守、柳生兵庫、そして宮本武蔵が蘇り、由井正雪の幕府転覆と連動して殺戮を繰り広げる、それを止めるのは柳生十兵衛三厳ただひとり、といったところです。

都築道夫氏の『なめくじに聞いてみろ』もそうでしたが、おっさんが読んでも胸踊る、極上のエンターティンメント小説というものがあるんですねぇ……いやもう、ただただ、天才・山田風太郎のストーリーテリングに埋没してしまいました(博覧狂記、史実にたくみにフィクションを織り交ぜることこそが風太郎マジックで、これがまた見事な塩梅なのですな)。

インフレしがちの少年漫画と違って、風太忍法帖で出てくる特殊能力って結構地味なんですよね(それがいいんですが)。

で、『魔界転生』の場合、甦るのは剣豪で、忍術使いではないものですから、やることはチャンバラです。

柳生十兵衛は剣の腕と策略で剣豪達を打ち破っていきます。

その策略がまたせこいというかずるいというか。

ただ、それをしないことには勝てない相手なのだ、ということで、剣豪達の強さも引き立つわけです。

せがわまさき先生のコミカライズは、恐ろしいくらいに原作に忠実なので、今はどのあたりですかね、宝蔵院胤舜とバトっているあたりだったと思いますが、今後の展開が楽しみです。

さて次は……『忍法八犬伝』を読み直すか、『警視庁草紙』にしようか……風太郎ワールドはきっとずっと日本人を魅了していくのでしょうね。