もはやきっぱりと、現実世界の事件なんて忘れてしまえばいいのに……と思わせる<神の時空>シリーズ最新作……3月発売でした。
今回は「伏見稲荷大社」の真実にせまっちゃう、てなもんです。
伏見稲荷の千本鳥居に、首をつった屍体が吊るされていた。
それも、二つに分かれる千本鳥居のそれぞれの入り口に、二体ずつ。
京都府警の瀬口と加藤は現場に向かう。
彼らは先日、貴船で起こった連続殺人事件 を片付けたばかりだった。
新人婦警の加藤は、自分に霊感があると信じており、貴船で起こった事件で出会った辻曲彩音のこともまた信じているようだった。
瀬口はその類のことを感じないので、あくまで現実として事件を解決しようとする。
一方、辻曲家の次女・摩季のため、神宝を集めている彩音と巳雨、そしてシベリア猫のグリは、広島・厳島神社での事件を終えて東京に向かおうと思っていたが、新幹線が終わってしまったので京都に滞在していた。
そこで、謎の男・高村皇の配下の女・磯笛が暗躍していることを知り、傀儡師の六道佐助とともに伏見稲荷大社に向かうのだった。
まあ、あらすじを書いたところでなんてことはないのですが、とにかく「伏見稲荷大社」の、というよりは「稲荷神」の謎に迫るのが今回の眼目です。
江戸時代にいたって、日本最大の流行り神となった「稲荷神」ですが、実のところその信仰の根っこはよくわかっていません。
本書ではある見解が示されます(それが歴史的に正しいかどうかはさておき)。
高田先生は、古代史の動きを鉄に重ね合わせておられることが多いので(この点、宗像教授と似ています……あちらのほうがより奔放な説が唱えられますが)、ここでももちろん登場します。
雷、蛇、鉄……そこに稲荷と狐がどう絡んでくるのか。
古代史好きの方にはオススメですが、神社伝承学(というのかどうか)は胡散臭く見られていますので、その辺りご注意を。
個人的には、狐と稲の関係は、体毛と尻尾だと思っていますけれど。
狐の尻尾は「稲穂」のように見えたのではないでしょうか。
「稲穂」は「稲の火」のことですから、狐にも火の属性が加わると。
そんな妄想をしたりしなかったりしています。