べにーのDoc Hack

読んだら博めたり(読博)何かに毒を吐いたり(毒吐)する独白

『スチームオペラ』芦辺拓

 

 いや、だからBABYMETALばっかり追いかけているわけではないんですよ……さくら学院とか……いやいや、もう、週末には『MHXX』がくるし(やる時間はあるのか)、来週には和楽器バンドの新譜は出るし、いろいろね……というわけで、読んで半年以上経っているのですが致し方なく……。

芦辺拓ファンの私としては、「スチームパンク×本格ミステリ」というだけでワクワクです。

主人公エマ・ハートリーは、空中船《極光号》の船長の娘で、技芸学校の女学生。

この世界では、”情念引力”によって職業の向き不向きが決定され、エマもそろそろ将来を決めて、誰かに弟子入りしなければならない時期に来ています。

しかし、その日はそんなことは棚上げで、父の船の帰還を見物に行ったのでした。

宇宙での調査を終えて、倫敦に戻って来た《極光号》にこっそり潜り込んだエマが出会ったのは、異世界からやってきたとおぼしき謎の少年。

そして、少年の入っていた繭を解放するため足を運んだ、名探偵バルザック・ムーリエだったのです。

 

ガール・ミーツ・ボーイ。

芦部先生は、こっちのほうがお好きなんですね(いや、『少女探偵、帝都を駆ける』とか)。

フェミニストなのか、それはそれでマッチョなのか。

ま、それはおいておきまして。

スチームパンクにくわえて、エーテルの満たされた宇宙、エーテル推進で飛行する空中船、バベッジの階差・解析機関(コンピュータのことですな)、大英帝国清帝国が和解している世界……歴史改変SFも加えた、異世界もの。

なんと、まぁ、燃えますな……。

どうやら、ユージンと名付けられた少年は、宇宙で拾われたらしく、しかも別の世界から来たらしい、と。

勢い余って、エマとユージンは、ともに名探偵ムーリエのところに弟子入りすることになり、そこからはもう芦辺ワールド全開の密室殺人、カーブに沿ってナイフが飛ぶという奇妙な遠隔殺人……その被害者がどうやらエーテル推進に関わっていたらしく、さらにはエマの友人で大富豪の娘サリーが誘拐される、という事件まで起こります。

そして、異世界SFですから世界の危機に陥りますし、その標的となるのが列国会議……ああ、燃えずにどうしますか。

この高潔たるジュブナイル

そして、ラストの大仕掛け(芦辺ファンなら薄々気づいていただろうあれ)。

SFのガジェットを存分に仕込んだ本格ミステリ

こういうの、書きたいなと思いますね、純粋に。

ここにバトルものが加わればそのまま少年誌行きなんでしょうが、今時の漫画がこのジュブナイルに耐え切れるとは思えないので、小説で、しかも本格ミステリの皮を被る、というのは重要なのだと思います。

芦辺さんについては、『殺人喜劇の十三人』から素直に入るといいんですが、私ひねくれもので、『怪人体名探偵』から入ったんじゃなかったかな……当時は「?」だったんですが、今考えると、非常によくできた久生十蘭パスティーシュ……あれ違うな……ま、とにかく、改めて読み直したくなる逸品ですし、<時>シリーズも情感たっぷりでいいですし……あと、結構登場人物に厳しいんですよね芦辺さん……それがまたいい感じかと(元新聞記者、ということで、イデオロギー的傾向が私と若干ずれていますけれども)。

うーん、もはや一番読んでるかもですね、芦辺さん(森博嗣さんと高田崇史さんの次くらいかな……最近は森さん読んでないや)。

古き良きものに触れたい方にはオススメです。