べにーのDoc Hack

読んだら博めたり(読博)何かに毒を吐いたり(毒吐)する独白

(※ややネタバレ)さくら学院公開授業「小説の授業)3時限目

さて。

『小説の授業』3時間目……少し時間があるかな、と思ったのですが、入場までそれほど時間はない、しかたないので会場周辺をうろついていました。

 

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横浜の夜景はきれいですね。

赤レンガまで行ってみればよかったかな……。

 

(※以下、基本ネタバレしかありませんが、2公演分の記憶がすでに失われつつあるので、『FRESH!マンデー』での振り返りをご期待ください。「続きを読む」を設定します※)

 

 

 

というわけで3時限目。

影ナレは新谷さんでした。

こちらも定刻やや押しだったかな、森センセ登場。

 

森センセ「聞こえました?『Kiss me again』がかかっている中で、ホネミンの音が(笑)。いつも3時限目は気合い入るらしくて、ばしっ、ばしっってね」

 

(この話、「朗読の授業」のときもやってたな……相当な音だったのかな)というわけで、気合いの入った生徒さん入場。

本日二回目の、生徒会長・山出さん。

岡田さんは、「年末、声が枯れていたんですけど、新年を迎えたら鼻声になっちゃいました。元気です!」……そろそろ花粉を感じる人もいますからね。

日高さんは、どうやら直前までわちゃわちゃしていたらしいです。

新谷さんは、いつも通り(安定感)。

森センセから、「2時限目で、先生から日誌の更新が少ない子」と言われていたことを突っ込まれた新谷さん、書くのは苦手だけど、「それを克服するために志願したんです!」と気合いばっちり。

日高さんは、本を読んでいることをみんな知っているだけあって、「それがプレッシャーなんです」……そうそう、読んでいるからって書けるわけではないんですよね(実際には、読んでないと書けませんけれどもね、天才以外は)。

岡田さんはいつも通り、ハードルを下げにかかります。

1時限目で宮木先生を見ている山出さん、森センセからどんな先生か訊かれ、

 

山出さん「森先生だよ(頷く)」

 

と謎の発言を(いや、2時限目拝見しているので、謎でもないですが……まさか、2ポーズ目はあるまいな宮木先生)。

ということで、宮木先生登場、森センセコスプレを見てみなさんざわつく感じです……岡田さんがぼそっと「ほんとに森先生だ」と……つかみはオッケーですね。

 

森センセ「人に教える、なんてことはほとんど経験がないそうで」

宮木先生「そうですね、そもそも十代の子と触れあう機会もほとんどなくて。これくらいの娘がいても不思議ではないんだけどね」

 

……という自虐ネタ(?)に、一瞬の静寂(触れられませんわ、そんなもん)。

3時限目の生徒は選抜クラス、

 

宮木先生「事前のアンケートで、小説を書きたい!って言ってくれた人たちということで……言ってくれたよね?」

 

若干心配なのか、確認する宮木先生がなかなかチャーミング。

一応、1時限目(風景からすてきな言葉を生み出す)、2時限目(人を描写して物語を生み出す)、の復習を「2分くらいで」やります、とおっしゃる宮木先生、2時限目で出した、無人駅の駅舎のベンチで微笑んでいる女の子の写真を、相変わらずたどたどしい感じでスクリーンに出してもらい(森センセ「全然上達しない」)、3時限目のみなさんにもやってもらおう、ということに。

1時限目にやっている、ということで、森センセから山出さんに見本を見せてもらおう、と振った瞬間に、岡田さんが「はい!」っと手を挙げて、もう完璧なタイミングで、いつも通りの一触即発、バトル開始、「なんで、もー」と言う山出さんをちょっと困った感じで「あ、やっぱ愛子にやってもらおう」と岡田さん、「いーよいーよ、やりなよ」と振り返す山出さん、会場は大いに沸いておりました。

ふてくされる山出さんを見て、

 

森センセ「この後で、仲良いんです!とか言うなよお前!」

山出さん「仲良いんですよ、本当に!ただ、こういうところは苦手ですけど!(怒)」

森センセ「(笑)何でも言い合えるから、仲がいいってことね」

山出さん「そうです!」

 

いいですね……こんなやりとりももうすぐ……(泣)

結局岡田さんが一番手になったんですが、その表現が、

 

岡田さん「11月の……」

 

と時期設定から始まり、非常に流ちょうな語り口で、会場も一瞬で世界観に引き込まれる物語性と描写力……の影で、険しくなる山出会長の顔つき……。

宮木先生的にも大絶賛でした。

 

森センセ「なかなかできるんですよ、うちの岡田」

宮木先生「なに、自分の娘みたいに。まぁ娘みたいなもんか」

 

 

と得意げな森センセ、

 

森センセ「ハードルがっと上がったな!どうする山出?」

山出さん「……スライド変えません?」

森センセ「(笑)」

宮木先生「あ〜、この1枚しか準備してないの」

 

会長の進言はむなしく打ち砕かれ、「考え直す」ということで、続いて日高さんがチャレンジ。

と、普段から想像力あふれる日高さん、岡田さんの発表に気圧されたのか、なかなか描写する言葉が出てこず、一言二言をひねり出して沈黙……そこで先生からの質問に答えることで、何とか描写をしていくも、席に座ったところで涙が……会場騒然、メンバーが日高さんを抱きしめる中、あわあわする森センセ、

 

森センセ「なんだよお前〜、先生とのやりとりで言葉を引き出してもらうってのもありだから!」

宮木先生「正解とかないからね」

森センセ「誰も悪くない。あえて悪いと言うなら、ハードルを上げた岡田のせい(笑)

宮木先生「!」

 

と、森センセのバラエティのノリに、宮木先生が手元の辞書で叩きにいく、というわちゃわちゃ感……なんだかいい空間でしたよ……。

落ち着いたところで、三番手ということで、新谷さんと山出さんが取り合うも、「後輩に譲りなさい」との森センセのお言葉で、新谷さんの発表。

新谷さん、滑り出し順調も雲行き怪しくなったと思ったら、突然クイズっぽい内容になり、「1番……2番……3番……さて、どれでしょう?」、「この後ろに写っている車は、ワゴンでしょうか?」とまるで写真の絵解きをしていくようなノリ。

 

宮木先生「面白い!けど、私とは全然ジャンルが違うので」

森センセ「なんか、名探偵が出てきた!みたいな感じだった」

 

いや、これも本当によかったですよ、新谷さんのエンタメ的なノリで、いきなりミステリーっぽくなって、全然ありでした(芸、という意味では芸達者でいらっしゃる)。

いよいよ真打ち、ということで、

 

山出さん「私、1番でしたよね?!」

森センセ「(笑)そういやそうだな」

 

それでも何かを振り切るように立ち上がった山出さん、「彼女は、インスタグラマー」という設定からはじめ、山の向こうにある海に写真を撮りに来て、たくさん盛れたので大満足の笑顔、でしめておられました。

これもこれで、いい切り口から舞台の広がりを感じさせる想像力が働いていて、とてもよかったと思います、さすがかいちょ!

 

で、みなさん舞台に出てきたときから紙の束を持っているのですが、どうやら宿題として小説を書いてきて、それをこの場で公開し、なおかつ公開で添削が入る、という……お、恐ろしい、なんて恐ろしい企画なんだ……テキスト派の私だったらブルって辞退しますよこんなの……しかし、みなさん表現者なのですよね……。

 

宮木先生「今日来たかたはラッキーですよ。どこにも発表していない小説を、ゆづみん達の朗読で聞けるんですから」

 

と、2時限目の「父兄ではない、名前のわからない親戚のおばちゃん」設定はどこ行ったんだというくらいに父兄心をわかっておられる宮木先生(これはこれで、なかなかすごい煽りだ……)。

お題は、「さくら学院のメンバーを思わせるような登場人物で」ということのようでした、で内容はフリー……フリーて……「小説を書いてみたい」という人たちのはずだから、きちんと添削すると宮木先生、例え「くそババア」と思われても……。

先生は30分くらい前に渡されて読み、森センセにいたってはまだ読んでいないという。

とりあえず、内容を知らない森センセは、新谷さんからスタート。

 

新谷さんの小説は、自分を主人公にしたもので、何かもやもやした人影に囲まれている夢から目覚めます(繰り返し見ている夢のようです)。

思い出すのは、レッスンで失敗した自分、どうしてもうまくできないようで、その日の練習もやっぱりだめ。

結局、うまくいかないので泣き始めてしまうと、メンバーが優しく抱きしめてくれた。
その光景が、夢で見た光景に似ているけれど、夢の中と違ってみんなあたたかかったよ、と。

 

宮木先生「……なにかあったの、ゆづみん?」

 

と、内容に思わず心配する先生&父兄さん方。

まあフィクション、ということですから……部活的なイメージでとらえるといいんでしょうか。

で、ここからの先生の添削がまぁガチで……細かい技術的なこと(句読点、一段下げ等)から、「時系列が分かりづらい」ので、「この出来事を、三日間のこととして考えて、夢を見たのは二日目、レッスンで失敗したのは初日、またレッスンでみんなに囲まれたのは三日目にすれば、すっきりする」……ガチすぎて、会場もしーんとなる雰囲気……宮木先生の本気度が伝わってきます。

 

森センセ「3時限目は、前半と後半で空気が違いすぎない?!」

 

と森センセもあまりのガチぶりに若干引き気味、入り込んでいる宮木先生はそれでも容赦なく……素晴らしい。

プロットに関しては、こうして細かく説明してもらったほうが絶対にいいと思います(何なら書く前に、映画のようにコンテ切ったりとかできるといいんですけどね……初めて書いた人に何を求めるのか……)。

 

続いて日高さんは、ご自身をイメージさせる、本が大好きな女の子のお話。

小さな町の小さな本屋は、すっかりマンガや雑誌に占領され、ギャル系の女子が幅を利かせている。主人公の好きな小説の棚は、店の奥へと追いやられ、日々そこで背表紙のタイトルを追いながらいろいろ空想する主人公。

途中、麻生さんや新谷さんを思わせる友達が登場し、ふと見つけた白い背表紙の本に触れると……という、ファンタジックな物語の、なんと序章(超大作っぽいな……イメージ的には『ナルニア国』とか『はてしない物語』系でしょうか)。

いや、本棚や本の描写に関しては非常にリリカルで、もうちょっとそぎ落としたら長野まゆみ先生っぽくなるかもしれません。

先生、「早く続きを書き上げてほしい」とおっしゃりながらもガチ添削。

主人公の年代がイメージしづらい、主人公がどれだけ「普通」なのかギャルとの対比をもう少しうまく使って……恐ろしいガチっぷり……小さな町の本屋のイメージが伝わらない、だからいっそ「ものすごく縦に長い本屋」にしてしまって、その奥の方に主人公の好きな小説が追いやられていることにすれば、そこから異世界へ通じる、というイメージが喚起される……ああ、いいですね、ぱっと様々な描写が浮かんできます(いやほんと、テキスト派のおっさんも非常に勉強になります)。

岡田さんが「ファンになった、早く読みたい」とおっしゃるも、次の展開(異世界に旅立つ)を日高さんがぽろっと言ってしまう、という超至近距離でのネタバレ発動。

この辺りから、宮木先生のガチ添削っぷりに、スタッフ&森センセが時間を気にし始めておられました(そうか、20時がタイムリミットでしたね)。

とはいえ先生、そんなことよりきちんと伝えなきゃ、ということで手をゆるめません(素晴らしい……)。

 

三番手は岡田さん、「めぐを重ねて聞いてください」と、自分をモデルにしたストーリー。

登場人物はアイドルグループに所属する女の子だけど、音痴、という設定で(会場笑)、今日もプロデューサーに罵倒され、あげくライブでは「マイクOFFるぞ」と言われてしまう始末。

ぶーたれながらも訪れたコンビニで、不思議なチョコレートを発見します。

吸い寄せられるように手に取ると、悪魔が出現、「一つチョコレートを食べると、願いが一つかなえられる」とのこと、主人公は「音程が完璧になりますように」「3オクターブが出ますように」(実践して、結構あやしい感じに会場笑)「オペラ歌手のような声量になりますように」では発声で胸のボタンが弾け飛ぶ、と。

意気揚々とスタジオに戻って歌ってみると、プロデューサーは大絶賛も、次のライブには出演させられない、と。

鏡を見るように促され見てみると、そこにまるまる太った自分の姿が。

チョコの箱には、「1つ食べるごとに?キロ太ります(何キロか忘れちゃった……)、甘いモノは計画的に!」と書かれていました、というオチ。

さすが愛知の星、素晴らしい!

叙述する、ということをよくご存じでいらっしゃる!

 

森センセ「最後でタモリさん出てきそうだった」

 

とおっしゃるように、『世にも奇妙な……』で取り上げられてもおかしくない出来映え。

宮木先生も、起承転結に関しては言うことなし、それでも細かい部分で突っ込みが入ります。

「悪魔の大きさ」は、何センチって書いちゃうと即物っぽいから、自分の体の部分と比較して描いてみる、とか。

「チョコの箱を抱きしめた、ってあるけど、そんなに大きくないよね」ということで、胸の前で抱き留めたにしてみる、とか。

 

宮木先生「児童文学賞とか、絵本とかにできそう」

 

とまぁ褒めまくりなもので、山出さんへのプレッシャーが……。

いやでも、日高さんにしろ岡田さんにしろ、本を読んでいるということがわかる達者な描写で、特に岡田さんなんかプロットも素晴らしい、あとはショートショートなので、細かい部分を極端に振ってしまったりすれば、より戯画的になって面白そうだなぁ……すごいな中学生、できる人は年齢関係ないんだなぁ……ミステリー的に言えば、主人公の姿がオチまできちんと隠されていて、いや達者な叙述です。

 

森センセ「これ、実写化するなら、是非脚本は俺に。原作・岡田愛、脚本・森ハヤシで。で、タモリさんは日高がやって」

日高さん「私やります!」

 

完全に『世にも奇妙な……』ですやん……でも面白そうだ……『FRESH!マンデー』の枠でやってくんないかな……。

 

さて、再びめいっぱいハードル上げられた山出さんですが、こちらは登場人物から意表をついていて、「森家」(森センセ)。

森家の長女には、実は人の心の声が聞こえる、という能力があり、そのことでほのぼのと進んでいくのか、と思われたのですが、あることがきっかけで心の声が聞こえなくなってしまった、と。

ところがある日、カメラ越しに見ると、今度は心の声がふきだしになって見えてしまうようになっていました。

そのカメラで、友達をファインダー越しに見てみたら、実は自分のことを嫌っている、ということがわかってしまい、そっとカメラを封印する、というお話でした。

ショートショートとして考えると、私はミステリー好きなので、能力が移ってしまうところに、もう少しきっかけ的なものがあるといいのかな、と思いましたが、いや面白かったです。

何が面白いって、森センセのファーストキスの場所をがんがん晒しているところとか……(恵比寿ガーデンプレイス)。

 

森センセ「あのさ……俺のファーストキスを、公開の場でこんなにいじるんじゃないよ!」

山出さん「(笑)」

宮木先生「そのファーストキスの相手が、今の奥さん?」

森センセ「いや、それが、違うところがちょっと複雑というか……」

 

 

あと、お父さんのほうは奥さんに対してラブラブなんですが、奥さんはそうでもなく、それなりに受け止めている(そして娘は、それを内緒にしている)という設定がいいですね……もうちょっと設定を生かせれば、いい感じのショートショートになると思います。

山出さんは、三度は書き直しているそうで、そのたびにみるみるよくなっていったとか。

最初は「小さな町」だったのが、「桜ヶ丘」という固有名詞をつけたことで、読み手がそれぞれの「桜ヶ丘」をイメージしやすくなった、とか(指摘がガチすぎて……)。

森センセをモデルに選んだのも、山出会長らしくて、父兄さんの意表もついてきているし、よくわかっていらっしゃる、このチョイスだけで満点です。

森センセのイジリ方も巧みで、しかも信頼関係も見えて、うん、個人的には山出さんの作品が一番好みでした。

で、終了はほぼ5分前、告知についても、

 

山出さん「告知は無しで!」

森センセ「そうだよな、無しでいいよな!ここにいる人はみんな知ってるから大丈夫!」

 

宮木先生も、その気があったら連絡してもらえれば協力する、ってなもんで、いいですね、さくら学院ショートショート集……アミューズさん、是非とも!

黒澤パイセンも、「剣舞の授業」からその後の展開があったわけですからね……本当に、可能性の芽吹く場所ですね、公開授業は。

 

森センセ「本当に実写化されたら、はじめて岡田の前でひざまづきますよ、先生って」

 

というわけで、幸せな感じで3時限目も終了。

楽しかった……いや本当に、テキスト派の自分自身も勉強になる授業でしたし、何よりみなさんの朗読が素晴らしかった。

自分の書いたものを、たっぷりと情感を込めて読むなんて、地獄の沙汰ですよ実際……その表現力たるや……あ、朗読CDなんてどうですかねアミューズさん(しつこい)。

今年一番とも言われる冷え込みの中、素敵な時間をありがとうございました。

 

ちょっと元気出た。

 

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