べにーのDoc Hack

読んだら博めたり(読博)何かに毒を吐いたり(毒吐)する独白

『キリング・ゲーム』ジャック・カーリイ

 

キリング・ゲーム (文春文庫)

キリング・ゲーム (文春文庫)

 

 

……あれ、おかしいな、急に新しくなった感じがする……もっと他にも読んでいる本があると思うのですが……まあいいか。

私自身は、ジェフリー・ディーヴァーにはほとんど興味がなかったのですが、なぜかカーリイは面白い(『百番目の男』の、「正気か、この作家……」というアレのせいかもしれません)。

そんなカーリイさんも6作目、カーソン・ライダーと相棒ノーチラスを主人公とした、モビール市警シリーズ。

今回のカーソン君は、表彰されたりとか、ポリス・アカデミーで教鞭をとったりとか、そこの学生たちと盛り上がったりとか、盗撮されたりとか、ユーチューバー(?)になったりとか、いろいろな災難に会うのですが、まあいつものことです。

ルーマニアからアメリカに渡ってきた、<チャウシェスクの落とし子たち>と言われるらしい、幼少期に相当な虐待によってトラウマを抱えることとなった人たちも登場します(ということは、当然怪しいわけです)。

ネタバレしないように紹介するのが難しいなぁ……猫の死体が発見されるようになり、同じ時期に、素性も年齢も殺害方法もバラバラな殺人事件が連続するのですが、その繋がりが何なのか、ミッシングリンクがあるのかないのか、というのが今回の眼目。

ミッシングリンクものは、犯人当てのように、なかなか「手がかりは揃っています」とできないのが難点ですね……徐々に明らかになっていくので、サスペンスフルではあります、これを本格として仕上げるには、手がかりの配置が重要で、伏線ってやつですね、そして、「書くことと書かないことを、ギリギリで峻別する」ことで情報をコントロールする、これがディーヴァーもでしょうが、カーリイさんもなかなかお上手なのです。

というわけで、今回も見事に引っかかりました……そして、陰影の余韻がまた、ハリウッド的というのか、大作的というのか、ああ『MGS』みたい……何のことやら。

お兄ちゃんもばっちり登場しますので、ご安心を(?)。

 

「そうした人々は生まれつきなのか、それともそうなるんっすか?」ジェイソン・ケロッグが訊ねた。

「そのように生まれつく者もいると考えられるね。脳の異常だ。僕が見てきた者たちーー殺人犯たちーーは作られた者だった。多くはスペインの宗教裁判が愉快に思えるような子共時代によって」僕は壁掛け時計に視線を走らせた。「時間だ。ここまでにしよう」(p50)