べにーのDoc Hack

読んだら博めたり(読博)何かに毒を吐いたり(毒吐)する独白

『虚構推理』城平京

 

虚構推理 (講談社文庫)

虚構推理 (講談社文庫)

 

 

私にとって城平氏は、150キロの変化球『名探偵に薔薇を』の人、という認識なのですが。

 

名探偵に薔薇を (創元推理文庫)

名探偵に薔薇を (創元推理文庫)

 

 

漫画『スパイラル』や『絶園のテンペスト』の原作を手がけていらっしゃったとは……。

『名探偵に薔薇を』は……あれ、覚えてない……とにかく地獄なのです、地獄、『ドグラ・マグラ』を思わせるやつ……あれ、違うかも……。

 

本作は、岩永琴子という少女(ただし、怪異に目と足を奪われ、つまり「一眼一足」の巫女となった)と、桜川九郎という青年(ただし、とある怪異の肉を食べたため、ある特殊能力を持っている)が、街の片隅で健気に生きているもののけ達のために、新参者の都市伝説に立ち向かう、という……なんか違うかな……大雑把にいえば、そういったちょっとライトな設定のミステリです。

私は『スパイラル』も『絶園のテンペスト』も読んだことがないのですが、近い色なのでしょうか。

ずっと読まなかったんですよね、気になっていたんですが……何しろタイトルが素敵でしょう、だから、面白かったらどうしようって思って(意味不明ですか?)。

もちろん設定も知らなかったんですが。

こういった、ライトなSFや伝奇チックな設定で、本格ミステリをやるにはどうしたらいいんだろう、と未だに妄想しているのですが形にならず、世の中にはそういったものが溢れているので、もうそれは諦めようと肩を落としているところなのです。

 

ま、それはいいんですが。

 

都市伝説、というのは新しいフォークロアで、古いフォークロアの中に生きている物の怪にとっては厄介な敵なのだそうです(物の怪が生きているかどうかはおいておいて)。

その都市伝説が成立してあらたな怪異が生まれる理由、その怪異が与える影響、そしてその怪異を倒す方法。

物の怪に知恵を与える神となった少女と、ある特殊能力を持つ青年がタッグを組んで仕掛けることは……ネタバレになりますのでこれ以上は書けませんが。

そうですね……ああ、そうか、『うみねこのなく頃に』というのがありますよね、あの言論バトル、あれに近いものが展開されます。

京極夏彦の<百鬼夜行>シリーズのような、詭弁まみれの仮説構築もあって、個人的には『うみねこのー』よりも面白かったです(『うみねこー』は漫画しか読んでいないので、実際のゲームでの臨場感とか知りませんけど)。

というか、世界観自体が、『ひぐらしー』や『うみねこー』の展開を含んでいます(周囲を巻き込む、という)。

 

主人公の一人、桜川九郎の能力の身につけ方が、また抜群に上手い。

これは思いつかなかったな〜、と素直に感心しました。

そうですね、どんな能力かというと……あ〜と、あの、漂白のYHV……

 

(ぐふっ)

 

……な、なんでもありません……。

主人公二人の名字がまた、皮肉が効いているといいますか。

 

どちらかといえば淡々とした文体で、時折最近のライトなノリツッコミ的なものを混ぜつつ(何しろ最近のライトノベルの登場人物はお笑いスキル標準装備のようなので)、起伏があるわけではないのですが、そこに情報量と詭弁が打ち込まれて嫌が応にも熱が上がる、という構成。

 

ああ、やられた……こういう風にやると、SFや伝奇を本格にできるんですね……しかしシリーズは難しそうですが……え、漫画がやってるんですか、これも?……アニメにはしやすそうですけれどね、途中まで(ラストのバトルがあれなので、絵的にどうなんでしょう……それこそ『うみねこー』みたいにしないと盛り上がらない気がしますが、やったらパクリですからね……どうなるんでしょ。

ともかく、久々に『名探偵に薔薇を』を読んでみようかと思いました次第。

 

「「怪現象の説明として地味で魅力的ではないので、話しても盛り上がらないでしょう? だからそもそも話題にならず、広まりません。」」(p167)

 

「物語」ですから。