……まさか、今更?
初版、というか最初の単行本が平成元年……読んだ当時で28年前て……遅い、遅すぎる俺。
えー、何だか説明するまでもない名作なのですが、とりあえずARだのVRだのが世間を賑わすようになってきた今だからこそ、読んでみる価値があるのではないか、と。
そうです、平成元年、未だインターネットもない時代、しかしSFの中ではすでにネットワーク世界が構築されていた時代、に書かれた本書は、感覚置換によるVR体験をもたらすゲームに関するミステリです(このあたり、講談社版文庫の、菅浩江氏の解説が素晴らしいと思います……『ドラクエIII』の出た年ですから)。
……うん、いろいろ書くとすぐにネタバレするので何なんですが……平成元年当時にこれが書かれた、ということは大変な驚きです。
ネタとしては大好きなんです……が、そうですね、なんというのか……ソリッドシチュエーションな映画とか、生き残りデスゲーム系のお話とか、タイムリープとか、そういった近年流行っているものの、ある種の元型なのかな、と思う(他にもたくさんあると思いますけれども)とですね、私、そういうのがあまり好きではないので……読む前からどんな話なのかは大体知っていましたし、そうするとオチはあれなのかなぁと思ったら……。
ミステリとして読んだとき、中盤のサスペンスフルな部分、後半に向けての謎解きの部分なんかは非常に硬質でロジカルなので、「そうそう、そうでなきゃね」と思ったり、SFとして考えると、2018年の今になって『ニューロマンサー』とか読んでみて「やっぱこのわけのわからん熱量だよな」と勘違いしちゃうほうの私としては、より身近になっているVRがむしろこの作品に肉薄してきているのがちょっと恐ろしい……そういやセカンドライフってあったよなぁ……。
というわけで、よく知りませんが『ソードアートオンライン』とか、『.hack』とか、それ系のネタが好きな人にも読んでいただけると面白いなぁ、と。