『軽率なワイドショーに物申す。ネガティブな中韓報道を売り物にするな!』
(現代ビジネス 2015/8/19)
以下一部引用。
「近隣諸国への侵略も含めた大戦が終わってから70年。それからは隣国との友好に向けて新たな歴史が始まった。安倍晋三首相は戦後70年談話で、「隣人であるアジアの人々が歩んできた苦難の歴史を胸に刻み、戦後一貫して、その平和と繁栄のために力を尽くしてきました」と言っている。
ところが、日本人の近隣諸国に対する悪感情は高まるばかり。昨年秋、内閣府が行った外交に関する世論調査によると、中国と韓国に対して親しみを感じないと回答した人の割合は1978年の調査開始以来、最高だった。領土問題を中心とする複雑な政治問題が背景にあるのは間違いないが、民放の一部ワイドショー、ニュース番組の報道も悪感情をいたずらに煽っている気がしてならない。
この調査で中国に対し、親しみを感じないと答えた人は計83.1%。同じく韓国は計66.4%。中韓両国と同じく北方領土問題等が長らく解決していないロシアは計76.4%。中韓両国との経済交流、人的交流の実情を鑑みると、釣り合わない気がする。ちなみに沖縄基地問題やTPP問題等があるアメリカは計15.3%に過ぎない。
この結果が中韓両国に関するネガティブな報道と無関係とは思えない。13日に起きた中国・天津での大規模爆発を報じるのは分かる。しかし、映像が面白いからといってコソ泥の類の犯罪まで報じるのは、はたして国内報道とのバランスが採れているのだろうか?
(略)
一部ワイドショーやニュース番組を眺めていると、まるで日本だけが一等国で、中韓両国は蛮国。戦前の新聞報道と近い臭いを感じる。番組制作者は自分たちのアンバランスな報道が近隣諸国との関係を害する理由になってしまったら、どう責任を取るつもりなのだろう。
(略)
『サンデースクランブル』では中韓両国の報道が売り物に見える。3月1日には「なんと7.5億円も…いま熱い! 中国・古美術オークションの舞台裏」と題する特集を放送した。中国の富裕層の間で古美術品蒐集の収集がブームで、オークションでは古美術品が数億円の値段で落札されるそうだ。
この報道にも首を捻った。日本もバブル期には古美術を含めた美術品蒐集が大ブームになった。政界も巻き込んだ「金屏風事件」(86年)も起きた。87年にはロンドンで行われたオークションで、ゴッホの「ひまわり」を安田火災海上保険(現・損害保険ジャパン)が53億円で落札。円高、金余りだった当時、ジャパンマネーは世界中の美術品を買いまくった。国勢の変化で日中の立場が変わっただけなのだが、そういった客観性と公平性の視座が同番組にはあるのだろうか。
(略)
72年の日中国交正常化後、初の留学生として来日した知日派の中国大使・程永華氏は現在の日中関係について、こう分析している。
「日本が中国に対し経済的にも政治的にも優位に立ったのは、日清戦争以降のせいぜい100年余にすぎないのに、日本人はどうしてもその直近の居心地の良い力関係が忘れられない。大きな中国と相対的に小さい日本という新しい二国間関係に戸惑いを感じている。換言すれば、日本人は優位性が急に失われたことに対するアイデンティティークライシス(自我の危機)に陥っている」(サンデー毎日8月16日号、サンデー時評)
この分析が正鵠を射ているかどうかは分からないが、少なくとも一部のワイドショーとニュースにはバイアスを感じる。国内の報道より抗議等を受けにくいからかもしれない。事実、国内の映像にはプライバシーに配慮してボカシが入れられるケースが目立つが、中韓両国の報道の大半にはそれがない。
(略)
「(韓国の)広がる格差…"財閥3世"問題に激怒! 超貧困スラム街の実情」(『サンデースクランブル』昨年12月21日放送)。日本にも一部上場企業や銀行、新聞社にまで同族企業があり、国会は政治を家業とするような2世、3世議員で席巻され、一方では貧困から公営住宅の家賃が支払えずにやむなく中学生の一人娘を殺した母親がいる。国内問題にもより目を向けるべきではないか。」
「日本人の近隣諸国に対する悪感情は高まるばかり。」
と書いておきながら、
「昨年秋、内閣府が行った外交に関する世論調査によると、中国と韓国に対して親しみを感じないと回答した人の割合は1978年の調査開始以来、最高だった。」
と、まるで近隣諸国は中国と韓国だけのような書き方。
バイアス、かかってませんか?
「番組制作者は自分たちのアンバランスな報道が近隣諸国との関係を害する理由になってしまったら、どう責任を取るつもりなのだろう。 」
戦中も戦後も、アンバランスな報道とやらに対してなんらかの責任をとったマスコミがありましたか?
戦後になって、新聞社が一旦全部つぶれた、という話は聞いたことがありませんけども。
ことが終わってから「反省する」だけでしょう?
だいたい、国家権力がなんらかの規制をしようと思ったら「横暴だ」と言い出すじゃないですか。
どんな責任をとらせられるんです?
「国勢の変化で日中の立場が変わっただけなのだが、そういった客観性と公平性の視座が同番組にはあるのだろうか。」
客観性と公平性なんかあるわけないでしょう。
そんなもの期待していないし。
日本は、高度経済成長期〜バブル期に、国内外で公害問題やら何やら相当ひどいことをやらかしていますが、近隣諸国はそれを反面教師にするつもりはないらしい、という部分は面白いです。
後発であれば、いいとこだけとることができるはずなんですけれど(その分、基礎が根付かないのかもしれないですが)。
人間が歴史から学ぶことなんて、本当にときどきしかないんです。
『「日本が中国に対し経済的にも政治的にも優位に立ったのは、日清戦争以降のせいぜい100年余にすぎないのに、日本人はどうしてもその直近の居心地の良い力関係が忘れられない。大きな中国と相対的に小さい日本という新しい二国間関係に戸惑いを感じている。換言すれば、日本人は優位性が急に失われたことに対するアイデンティティークライシス(自我の危機)に陥っている」』
アイデンティティークライシスねぇ……そんなものを中国に感じている日本人はそんなにいないと思います。
ただ、普通に警戒しているだけです。
隣の国なんですから。
「少なくとも一部のワイドショーとニュースにはバイアスを感じる。」
バイアスのかかっていないワイドショーやニュースがあるとでも?
「国内問題にもより目を向けるべきではないか。」
そりゃその通りですが、ワイドショーやニュースショーに何を期待しているんでしょうか。
この記事は、「国内問題に目を向けろ」と言いたいのか、「中韓に気を使え」と言いたいのか、どっちなんでしょうね。
中韓の報道のことも調べたらいいと思いますよ。
どこの国でも、報道なんてバイアスだらけでしょう。
全体主義国家なら為政者の、資本主義ならスポンサーの意向が重要なんでしょうに。
(元記事)