べにーのDoc Hack

読んだら博めたり(読博)何かに毒を吐いたり(毒吐)する独白

『失われたミカドの秘紋』加治将一

 

 

ときどき加治将一氏の本を読みます。

陰謀論などなど、半ば『ムー』っぽい話もありますが。

本作も、簡単に言いますと日猶同祖論を根底においたものとなっています。

いつ頃から人間が日本に定住していたのかについては諸説ありますが、長い時間をかけてアフリカから旅をしてきた(グレートジャーニーというやつですね)人々だったことはおそらく間違いないでしょう。

それから後も、人々の移動がなかった、と考えるのは論理的ではありませんので、やってきた人々もいたと思われます。

そこからアラスカに到達した人たちもいるようですが。

それはともかく、本書ではユダヤ人が東方へ逃げ延びてきた、それを追うように東方にやってきた人々がいた、それが日本に渡って朝廷を作り、『日本書紀』をうまい具合に作り上げた、というような話が書かれています。

細かい部分まで書くことはできませんが、この話だけなら、飛鳥昭雄氏の話とさして変わりませんので、それほど新しいわけではありません。

 

失われた日本ユダヤ王国「大邪馬台国」の謎 (ムー・スーパーミステリー・ブックス)

失われた日本ユダヤ王国「大邪馬台国」の謎 (ムー・スーパーミステリー・ブックス)

 

 

↑とか。

こういう妄想的なお話で練り上げられる小説というのが私は好きで、それは、断片的な情報を結びつけることで得られる快感が原因ではないかと思っています(飛鳥昭雄氏の本も何冊か読んでいますし、もともと「ムー」っ子ですから昔から知っていますし、結構面白いんですよ)。

ダ・ヴィンチコード』があれだけヒットしたことを考えると、あるいはジェームズ・ロリンズが結構人気なのを考えると、こういう荒唐無稽さ(歴史的事実に基づいているだけに、一見真実っぽく見える)を求めるのは日本人だけではないのだなぁ、と。

ま、日本には高田崇史氏がいらっしゃいますが。

 

本書が比較的新しいと思うのは、

 

旧約聖書は漢字で書かれていた―「創世記」が語る中国古代文明の真実

旧約聖書は漢字で書かれていた―「創世記」が語る中国古代文明の真実

  • 作者: C.H.カン,エセル・R.ネルソン,C.H. Kang,Ethel R. Nelson,林玲子
  • 出版社/メーカー: 同文書院
  • 発売日: 1998/04
  • メディア: 単行本
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↑を組み込んでいるところかな、と思います。

もはや絶版のようですが、なぜか手元にあったりします。

読んでみるとなかなか面白いです。

こういった説が、西洋から東洋をつなぎとめる役割を果たし、やがてユダヤの文化が日本にまでたどり着くことになる、んでしょうかね。

「大秦景教流行中国碑」が本書に出てきますが、これって最近の歴史の教科書に載っているんでしょうか?

私が学んだときには、普通に掲載されていて、「へぇ、中国にキリスト教が」と妙な関心をしたものです(ネストリウス派なので、異端ですけども)。

すぐそこまできていたのだから、日本に来ていてもいいはずだ、と思います。

でも日本には景教ってないんですよね……これは不思議な話です。

 

古代史の話は、極端なものばかり読んでいるとへんな方向に行ってしまうので戒めねばいけないのです。

ただ、妄想が好きな私としては大統一理論のように、全部をすっきり説明できる説が出てこないものか、と思っています(まぁ無理ですが)。

なので、高田崇史氏も、加治将一氏も同じように楽しんでいます(本当は、網野善彦とか上田正昭とか、いわゆる大家の本も読まないといけないんでしょうけれど……そうだなぁ、網野さんくらいは読んでおくかな)。

 

 

「しかしそれが本当だとすると、ファースト・エンペラー秦に始まり、モンゴル系の蒙古、つまり元、それに今お話しした唐、隋、さらにはラスト・エンペラー清に至るまで、有名どころの王朝のほとんどが漢民族でないことになってしまいます」(p204)

 

そう、よく考えてみると、大陸を漢族とやらががっちり支配していた時代というのは、歴史上半分くらいなんじゃないでしょうか(元と清だけでは1000年とはいきませんが、本書では他にも遊牧民族系の王朝が多かったのではないか、と書かれています)。

この、中国史に関する部分が、実は本書で一番面白い部分ではないか、と思います。