〈シグマフォース外伝〉タッカー&ケイン シリーズ1 黙示録の種子 上 (竹書房文庫)
- 作者: ジェームズ・ロリンズ,グラント・ブラックウッド,桑田健
- 出版社/メーカー: 竹書房
- 発売日: 2016/06/30
- メディア: 文庫
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〈シグマフォース外伝〉タッカー&ケイン シリーズ1 黙示録の種子 下 (竹書房文庫)
- 作者: ジェームズ・ロリンズ,グラント・ブラックウッド,桑田健
- 出版社/メーカー: 竹書房
- 発売日: 2016/06/30
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ロリンズ祭り。
今回の主人公は、<Σフォース>シリーズに登場した、元陸軍レンジャー部隊のタッカー・ウェインと、彼の相棒である軍用犬ケイン。
<Σフォース>のスピンオフなのです。
というわけなのかどうなのか、共著としてグラント・ブラックウッド氏が加わっています(トム・クランシーなんかとの共著があるようで)。
もともと獣医であるロリンズ先生、その科学的視点が物語に深みと彩りを添えているのはもちろんのこと、(ほぼ)毎回動物が登場し、いろいろと重要な役割を担ったりします(もっぱら敵として、ときどき味方として)。
そんな中でも、『ギルドの系譜』に登場したケインは、軍用犬としての能力、タッカーとの共感力、千を越える語彙を理解し、忠実に、誠実に狩りを行う、萌え萌えな犬なのです。
猫派の私ですが、こういうのを読むと犬もかわいいなあと思います。
ストーリー自体は、いつもの通りの<Σ>なのですが、外伝扱いなのは<Σ>の隊員がほとんど出てこないからでしょう。
特に、本編の主人公グレイソン・ピアーズが出てこないのが大きいかと。
軍を抜けて世界を放浪しているタッカーはたまたまロシアで用心棒的な仕事をしていたところ、運悪くペインター・クロウに見つかって(<Σ>は世界中のどこにも情報源を持っているらしいので)、ある仕事を頼まれます。
ロシア当局に追われている科学者を国外に脱出させるだけでいい、という、<Σ>のいつもの案件に比べれば簡単そうな話です。
というか、あれですねあれ、『メタルギアソリッド』みたいですよね。
最新作には相棒になる犬が出ていたような気がします(難しいゲームはプレイできませんです)。
こっちには大型機動兵器は出てきませんが。
おっと、軌道修正。
どうやらその科学者は、生物の起源に関する重要な発見をしたらしく、それはアフリカで、ボーア戦争時代にとある医者が発見したものらしく……ボーア戦争とかオレンジ自由国とか、受験以来聞いた気がします……「アルザマス16の将軍」たちがそれを追っているらしく、ついでに美人のスウェーデン人傭兵にも狙われるらしく(狙撃手です……モシン・ナガンは持ってないですが)。
そういえば、<Σ>の隊員のハーパーという女性がタッカーに協力するのですが、通信でしかやりとりがないので、『メタルギアソリッド』のパラメディックみたいでした。
うーん……いやいや、小島氏がアメリカの軍関係の情報に精通している、ということなのでしょう(ロリンズ先生が『メタルギアー』をパクる理由がないですからね)。
日本のファンは、そんな感じでも楽しめると思います。
内容は、まあいつも通り、最新科学と、歴史とが絡まりあって、世界の危機を救う、というやつです。
そういう意味では<Σ>のパターン。
敵方に手強い女性がいるのもパターン。
軍用犬のケインがいる、というスパイスが、さて<Σ>との違いを出すのに効果的なのかどうなのか。
あ、作中にデクラークという人物が出てきますが、スレイドの<カナダ騎馬警察>シリーズに出てくる人とは多分関係ありません。
「「アジトに向かっているところだが、そこには人がいるのか?」タッカーは訊ねた。要求した物資はできるだけ早く確保した方がいい。
「いないわ。アパートの部屋よ。私が教えた番号に電話をかけ、呼び出し音を三回鳴らしたら切る。それからもう一度電話をかけ、今度は二回鳴らして切り、十分間待つ。そうしたら扉のロックが解除されるわ。中にいられるのは五分間だけ」
「おいおい、冗談だろう?」
「簡単なのがいちばんよ、タッカー。襟の折り返しに花を挿して公園のベンチに座っている靴紐がほどけた人を探すよりも、この方がずっと簡単だわ」
確かにその通りだ。兵士がいつも心がけているのはKISSーーKeep It Simple, Stupid(簡単にしろ、馬鹿者)の頭文字だ。」(上 p190)
「「頑固なやつだな」タッカーは言った。
「母からもよく同じことを言われます。『やつ』という言葉は使いませんけど」」(下 p89)
『ギルドの系譜』に出てきたときは、もうちょっと陰気なキャラだと思っていたんですが、結構明るいですタッカー。
あと、やってることが<Σ>の隊員数人分の活躍です。
やりすぎ。
まあ、一人と一匹だから……しょうがないのか。