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べにーのDoc Hack

読んだら博めたり(読博)何かに毒を吐いたり(毒吐)する独白

『星籠の海(上)(下)』島田荘司

 

星籠の海 上 (講談社ノベルス)

星籠の海 上 (講談社ノベルス)

 

 

星籠の海 下 (講談社ノベルス)

星籠の海 下 (講談社ノベルス)

 

 「御手洗潔」がドラマになったというときには驚いたものです。

ドキドキしながら、「まさか『斜め屋敷の犯罪』ではなかろうな?」と思っていました。

結局ドラマは見ませんでしたが。

ただ、今度は映画になるそうで、それも2013年に出た「御手洗もの」。

とりあえず、読んでおかないとと思って買いました。

 

御手洗潔と石岡クン(物語中は、そう読んでもいい年齢……かな?)は、四国のある島に死体が流れ着く、という事件を耳にする。その解決のために中国地方へ向かう。

 

島田先生の、特に長編は、御手洗と石岡クンだけが活躍する、というものではないので、次にある男性の物語が挿入されます。

 

男は昔から女にモテた。そのせいばかりではないだろうが、自分で決めたわけではない選択に身を任せ、上京し、挫折した。一緒に上京した恋人は、女優への道を進んでいたためすぐに別れ、その後彼女は女優を断念する。結局、一緒に郷里の鞆に戻ることになった二人だったが、恋人は男の目の前で焼身自殺をする。最終的に男は、新興宗教に頼ることになる。

 

さらに、村上水軍の残した古文書に出てきた「星籠(せいろ)」という謎の言葉、瀬戸内海に出没するという怪獣騒ぎが絡んできて、どこに何が帰着するのかがさっぱりわからないまま話が進んでいきます。

 

島田先生といえば、「大物理トリック」(勝手に命名)がお得意なのですが、今回はそちらは控えめでしょうか。

本格ミステリ=社会派、というのも島田先生の特徴ですから、今回もそれに満ちていまして、何しろ某宗教団体(合同結婚式とかね)をモデルにしたと思われる新興宗教が出てきます。

地方都市の悲哀、人生の最悪の歯車に巻き込まれる男と女(大抵、男は愚かで、女はしたたかに生きようとするのですが、結局どちらも破綻する)、歴史の謎……なるほどこれだけ詰め込めば、この分厚さになるわな、という代物でした(分冊になっているのは、多分出版社の事情でしょうが、厚さてきには『アトポス』くらいでしょうか……いや『水晶のピラミッド』くらいかな)。

あっちこっちに話が飛ぶし、御手洗と石岡クン以外の話は会話も含めて生々しいし、で島田先生が苦手な方もいらっしゃるかと思いますが、私はそれが結構好きですね……京極夏彦さんなんかもそうですが、人間が描けているってこういうことなのかなと思います(違うかもしれません)。

巻末付録も必見です(が、あれ、島田先生はこっち寄りでしたっけ……)。

 

 

「どこまで行っても小坂井は、誰かのフォロワーだった。すぐに他人に影響され、要求されて行動を起こし、黙ってあとについていく。そしてリーダーは、たいてい女性なのだった。」(上巻p150)

 

フォロワーという点で共感しますね……それじゃダメだって言われてるわけなんですが。

 

 

「そう。たかだ宗教団体が国家に反逆いうても……」

しかし御手洗は、首を左右に振った。

「今に解りますよ。そしてその時ではもう遅い。本件は外国がからんでいるんです。国境問題で、日本周辺は反日気運が高まっている。まず踏ん切りはつかないでしょう。下手をすれば戦争になる。しかし……」(上巻p315)

 

 

「そうだ石岡君。日本人はみんなだまされている。世界に動かされている公共放送と某新聞、某国立大学の教授たちに。マッカーサーGUQのWar Guilt Onformation Programの洗脳がまだ解けていないんだ。これが白人流の平和外交というもの。高度な詭道戦であり、孫氏の兵法の一環と言える」

「なんで?」

「かつてアジア・アフリカは、大半白人の植民地だった。まぬがれていたのはわずか三ヶ国だけ。風土病のあったエチオピア、たまたま英仏の力の狭間に落ち込んだタイ、そして極東日本だ。

しかし太平洋戦争で、日本がアジアの植民地をみんな独立させてしまった。フィリピン、ヴェトナム、インドネシア、インド。だからここから安いエネルギーや食料を入れて優雅に暮らしていた欧米の白人たちは、自分で働かなくてはならなくなってしまった。彼らには厳しい時代が始まったんだ」(下巻p351)

 

しかし、これ映画にできるんですかね……文○明をモデルにした教祖を誰がやるんだろうか……。