シグマフォース シリーズ? ジェファーソンの密約 上 (竹書房文庫)
- 作者: ジェームズ・ロリンズ,桑田健
- 出版社/メーカー: 竹書房
- 発売日: 2014/10/30
- メディア: 文庫
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シグマフォース シリーズ? ジェファーソンの密約 下 (竹書房文庫)
- 作者: ジェームズ・ロリンズ,桑田健
- 出版社/メーカー: 竹書房
- 発売日: 2014/10/30
- メディア: 文庫
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一人ロリンズ祭りも佳境に入ってまいりました。
今回はアメリカが舞台でございます。
アメリカというと、我々の認識では「たかが建国数百年」なのですが(失礼)、実際にはそれよりはるか前に人類は存在しており、元々の大陸の住民たちの間に文化や文明が保持されていたのではないか、と考えるSFや漫画は多くあります。
中南米の遺跡が顕著なので、そちらに意識は行きがちですが、北米大陸も捨てたものではない、と。
1779年、ケンタッキー群の先住民の遺跡、うねるように伸びる細長い墳丘で発見されたのは、バッファローの毛皮と、巨大な何かの動物(マストドン)の頭蓋骨を発見する。人の手により加工の施されたそれらの品物を発掘していた人物、現地の親子とフランス人ーフォルテスキューーは、突如先住民に襲われる。襲撃の中で少年は、その先住民が何者かが変装した姿だと看破した。フォルテスキューは発掘した遺物を少年に託す。それを「トマス・ジェファーソンに届けてくれ」と。
現在、ユタ州ロッキー山脈。先住民の少年二人が潜り込んだ洞窟には、集団自殺をしたと思しき先祖の遺体が転がっていた。そこにやってきたのは、一族の長の一人であり、一人の少年の祖父でもあった。彼は「洞窟に入ってはいけない」という菌を犯した孫を殺害し、そしてまた自らも銃で頭を打ち抜いた。
生き残った少年はそのことを世間の目に晒し、ニュースとなる。やってきたー先住民と白人のー科学者は洞窟の中を調査する。先住民たちは、自分たちの遺跡を荒らされるのではないかと全米から集結して推移を見守る。そんな中、発見された遺物を運ぶ途中、大規模な爆発と思われる事態が起こり、科学者が一人消えてしまう。しかも、その跡では、固い岩盤が非常に細かい粒の流動体となり、それが拡大していた。「地面がまるで溶けていくように」亡くなっていく。
その一部は録画され、全米に放映される予定になっていた。その中の映像がいち早く、シグマの元に届けられる。どうやら先住民の遺物の一部をこっそりと盗み出した人物が映っているらしい。それを見た司令官のペインター・クロウは驚きを隠せなかった。間違いなく、自分の姪だったからだ。そして、姪からの電話がかかってくる。「助けて、クロウおじさん」……。
アメリカを描くのには、先住民を避けては通れない、ということなのでしょう。今回の話はペインター・クロウのルーツにかなり迫る(と同時にアメリカのルーツにも、ですが)ものとなっています。
実際、あまり先住民のことは知らないので、日本人は無責任に面白く読めるでしょう。
一方の主人公・グレイソン・ピアーズは、これまたヒロインといってもいいギルドの暗殺者セイ・チャンに導かれるように、敵対するギルドの深淵へと赴こうとします。アメリカ合衆国国璽に秘められた謎を探って。この間イギリスに行ったと思ったら(前作)、今回はアイスランドです。大変ですグレイ隊長。
そして本作には、日本のスーパーカミオカンデが登場します。そこで見られるニュートリノの異常検出が、一つの鍵を握っているようです。
他にも、クロウの姪を狙うギルドの冷酷な支配者(ただし骨形成不全症)と付き従う女性(子供の頃に舌を切られて喋れない)、というロリンズ好みの敵役が出てくるのももはやお約束。
ナノテクノロジー、モルモン教、14番目の植民地……各隊員が世界中で活動しているのはいつも通りですが、今回は特にバラバラにされている感じがあり、でも映像にしたら面白いだろうなぁと今回ほど思ったことはないですね。
というわけで、今回も一気読みしたのであまり内容は覚えていないのでした。
「グレイが何をわかっているって言うんです?あいつはDC市内を自転車で走り回っているようなやつでしょう。男は自転車に乗るべしと神様が考えていたのなら、あんなところにタマを付けたりしませんよ」(p186)
byコワルスキー。
あ、いつにも増してコワルスキーが専門家らしかったのが面白かったです。