読書メモが中心のブログだったのですが、いつのまにやらBABYMETALとさくら学院の記事ばかり……読んだ本は溜まっているのですが、去年のことで、読んだ記憶すら怪しいという……そんな中、気を取り直しての『蛇の書』
どうやらジョン・ル・カレの孫娘らしいのですが、正直ジョン・ル・カレをほとんど知らないのでピンときません(残念)。
文庫なのに結構なお値段ですね。
ストーリーとしては、古書学者(超感覚の持ち主で、聴こえないものが聴こえる)のアナ・ヴェルコがマヨルカ島の修道院で発見した古書ー錬金術に関わるらしいーに、十年前にバルセロナで起こった未解決の連続殺人事件との関連が見出されるところから始まります(ここまでで、結構なページを消費しています)。
事件を担当したカタルーニャ自治州警察の元警部ファブレガートの元を訪ねたヴェルコは、そこで事件の詳しい話を聞きます(回想シーンに近い)。
連続殺人の犯人は、死体が発見される前に謎の図形と文字が書かれた手紙を警部に送りつけてきます。
そして、発見された死体には、それにそっくり同じ図形と文字が刻まれていました。
どうやら、当時、バルセロナで行われた舞台関係者が怪しいようですが……(殺されたのは舞台女優の他、様々な職業の女性たち)。
第二章では、中世の錬金術師レクス・イルミナトゥスの研究者に関する情報が叙述され、歴史的、オカルト的要素から事件が解体され……あらすじになっているのかどうかよくわかりませんが、非常に重厚で特徴的な叙述により物語が進んでいきます。
これを女性らしい繊細さ、というのはあまりに短絡的にも思いますが、訳のせいもあるのか、私なぞには非常に女性らしいな、と感じられます。
そうですね……

- 作者: ジェーン・S.ヒッチコック,Jane Stanton Hitchcock,浅羽莢子
- 出版社/メーカー: 角川書店
- 発売日: 1997/07
- メディア: 文庫
- クリック: 8回
- この商品を含むブログ (13件) を見る
↑これを昔読んだことがある(と思う)のですが、似た気配です(あ、これは小説で、魔女狩りの有名なあれとは違いますので)。
歴史ミステリ好き、伝奇っぽいもの好き、高田崇史好き、ジェームズ・ロリンズ好き、な人であれば楽しめると思いますが、知的追跡の部分が、非常に西洋的な思考に基づいているので、日本人にはなかなかついていけないかもしれないな、とは思います(西洋史に関する、西洋人が書いた本や論文を読んだことのある人なら大丈夫かも……)。
いかんせん、読んだのが結構前なので思い出せないのがいけないのですが、『タイムズ』紙が帯に書いている、「称賛に値する重層的なストーリー展開」、や、『ガーディアン』紙の、「すべてに関連があるーーだから要注意だ」というような評が、内容をよく表しているのと同時に、この手の(といってまとめるのもなんですが)物語の限界値の内側にあることも語っているのではないかと思います。
しょせんミステリ、されどミステリ。
ああそうか……今気づきましたが、プロットが島田荘司っぽいのかもしれないですね……。
「彼の口元がゆるむ。サメのように。気をつかっている。「考えてみたら、”ピカトリクス”というのは”ピカチュウ”に似ているな。あのポケモンのさ」
「中世のある魔術師との関連からつけられた名称です」私はいかめしく言う。「その魔術師には名前が三つありました」」(p78)
「「あの蛇はウロボロスというものだ。二世紀のアレキサンドリアにはじまる概念で、『クレオパトラの金つくり』という錬金術の本に出てきますよ。ギリシャ語のヘン・トゥ・パン、すなわち一はすべてである、という主張を連想させるものですな……」」(p97)
「一月のバルセロナは痩せている。裸の木々。鉛色の雲、たちのぼるやわらかな霧がまとわりつく。街を歩いて入ると、街が動いているのがわかる。こそぎ落とされ、またこそぎ落とされる。
書かれて、またそこに書かれる。」(p139)
「なぜかといえば、考える女はしゃべる女よりももっと始末が悪いということが、あらためて証明されるからです……」(p160)
「「長い話だ」ピラフランカが時計に目をやる。「かいつまんで話そう。コーヒーのおかわりを頼む」ピラフランカはバーからウェイターに手をふって合図する。「ふたつだ」とウエイターに言う。「たとえきみが飲まなくてもね。古いと思うだろうが、ひとりでコーヒーを飲むのは礼儀に反するんだよ」」(p426)